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窪塚洋介
『沈黙−サイレンス−』
一度はオーディションに落ちていた
『沈黙−サイレンス−』窪塚洋介 単独インタビュー

取材・文:磯部正和 写真:尾鷲陽介

遠藤周作の小説「沈黙」を、マーティン・スコセッシ監督が長い歳月を費やし映画化した『沈黙−サイレンス−』。キリシタン弾圧の嵐が吹き荒れる江戸時代初期にやってきた宣教師たちの数奇な運命を描いた本作で、物語の鍵を握る日本人キチジローを演じたのが、個性派俳優・窪塚洋介だ。ハリウッド作品初参加となる窪塚は、スコセッシ監督の撮影現場のプロフェッショナルぶりに感服し、「次に何ができるんだろう」と思ったという。そんな彼が作品への思いや自身の俳優人生について語った。

■「NO」と一刀両断されたところからの挽回!

Q:ハリウッドデビュー作となりますが、出演経緯を教えてください。

7年ぐらい前に一度オーディションに声を掛けていただいたんですね。スコセッシの映画ということで、参加させてもらったのですが、アテンドが控え室と言って通した部屋が会場で、(それを知らずに)ガムをかんでいってしまったんです。そうしたら会場に入った瞬間に、いきなり女性のキャスティングディレクターの方に「マーティンはあなたみたいなヤツは大嫌いだから」って言われてしまって(苦笑)。まあ空気は最悪ですよね。そんな状況でも力を発揮できればカッコいいのですが、完全にのまれてしまってダメでしたね。

Q:そこではいったんNOという返事だったのでしょうか?

案の定、翌日ダメだったという連絡をもらったんです。もう終わったから気持ちを切り替えようと思って過ごしていたら、2年後ぐらいにまたオーディションを受けないかという話が来たんです。突然のオファーよりも、まだオーディションをやっているんだということが何より驚きでしたね。すごい熱量だなって。こちらもせっかくだし、今度こそという思いで再度オーディションを受けさせてもらったら、俺にダメ出ししたディレクターがまたいたんです(笑)。でも当時のことを忘れているようだったので、そのまま思い切りビデオオーディションに臨んだら、今度はすごく気に入ってくれたんですよね。

Q:そこで好感触をつかんでいたのでしょうか?

興味を持ってくれているなとは思っていました。そのあともう一度ビデオオーディションをして、マーティンが来日して、東京のホテルで最終オーディションという運びになったんです。

Q:スコセッシ監督はどんな印象でしたか?

「うららかな日差しの中にたたずむ、初老の巨匠、笑顔で振り返る」みたいなシチュエーションでしたね。冗談言いながら相手役をしてくれたり、芝居をしてくれたりして、こちらをリラックスさせて、一番いい芝居を引き出してくれるようなシチュエーションを作ってくれるんです。全部オーディションが終わったあとに「(ロケ地の)台湾で会おう」と言ってくれたので「これで決まったのかな」という実感が湧いてきましたね。

Q:スコセッシ監督の撮影現場はいかがでしたか?

あらゆることが新鮮でしたが、何よりもチームスコセッシのプロ意識の高さがすごかったですね。ハリウッド映画にしては低予算の類だったようで、常に「低予算でごめんね」って言うんですよ。こちらはそんな規模の映画なんてやったことないし、十分すごいでしょって思っていたんですけどね。もちろんすごいのは機材云々、予算云々ということじゃなくて、マーティンを中心にスタッフを含めたフォーメーションが絶妙なんです。いい映画を撮るのは当然として、役者が芝居をしやすい雰囲気を作ってくれるし、本当に彼らのプロっぷりには脱帽でした。こういう現場を経験しちゃうと、次に何ができるんだろうって思ったぐらいです。

■連続ハリウッド作出演も「地に足をつけて」

Q:次作も『ハンガー・ゲーム』『ピッチ・パーフェクト』シリーズで知られるエリザベス・バンクスと共演するハリウッド作品が決まっているとお聞きしていますが。

「海外ではノーマークだった俳優がスコセッシ作品の3番手でいくということは、ハリウッドではすごいインパクトなんだよ」とは言われていたんですよね。でも英語が堪能なわけじゃないし、少し開いた扉をグッと押し開いていきたいという思いはあるけれど、2本目も決まってトントン拍子だなっていう浮かれた気持ちは一切ないですね。

Q:それはどういう思いからでしょうか?

地に足をつけて臨まないと自分がブレちゃうと思うんですよね。調子に乗っていたわけじゃないけれど、20代前半に足元をすくわれた経験もあるので。今良い流れになってきたなって実感があるんです。2周目というか、あらためて自分がやるべきこと、やりたいことをしっかり見据えていかなければと思っているんです。

■窪塚洋介が考える、作品への出演基準

Q:窪塚さんにとって作品に出演する基準ってあるのでしょうか?

台本を読んで楽しめるかどうか。台本を読むのってある意味、撮影のときと同じぐらい楽しみなんですよね。そこに「漫画原作なんですよ」とか、「イケメン俳優がいっぱい出ますよ」とか、そういう情報が追加されていくじゃないですか。そういうのを全部ごちゃまぜにして、俺が“心のまま”にワクワクしているか。それが一番重要なんですよね。

Q:近年テレビドラマに出演していない理由も、そういった部分があるのでしょうか?

20代前半のどこかのタイミングで、テレビドラマはもういいかなって思ったんですよね。その代わりに舞台という新しい表現の場に踏み出していったので、役者としては、映画と舞台で勝負したいという気持ちが強いですね。舞台をやったことによって、ステージ上でレゲエミュージックをやることと相互作用するようになったんです。

■「卍LINE」を手に入れたことによって見えたもの

Q:「卍LINE」としてのアーティスト活動は、ご自身にとってどのようなものですか?

以前メディアにいろいろと言われていた時期があったのですが、今みたいにインターネットもなく、言い返す場がなかったんです。そんなストレスフルな状態のとき、表現する武器となったのが「卍LINE」ですね。これを手に入れてからは、すごくバランスが良くなっていいフォーメーションで未来に進んでいけている気がします。

Q:「卍LINE」と映画俳優という仕事はリンクしているのでしょうか?

映画は監督のもので、俺ら俳優は駒だと思っているんです。単純に駒として、役を生きるのは自分的には好きなんです。「卍LINE」はダイレクトに自分のメッセージを伝えられる場なんです。遊びと仕事が一緒になっている場所。こちらの活動があるから、俳優としては「ワクワクするものだけをやります」って言えるんですよね。

Q:『沈黙−サイレンス−』は“心のまま”にワクワクした作品なんですね。

曇りなき目で見つけてくれたなって気持ちですね。いろいろなフィルターを掛けられてきた側の人間なので……。本当に人間の心の深くまで潜っていける作品。それでいて一番奥に答えのようなものが置いてある作品ではないんです。そこにいく過程で何を思ったのかということが答えという映画。そりゃタイトル『沈黙』だわなって思いますよね。声なき声を聞きとってほしいですね。

窪塚の「今は2周目という感覚」という言葉が非常に心に響いた。メディアを通して窪塚のイメージが伝えられる中、「色眼鏡でちゃかされてきたタイプの人間だから」と自虐的に語っていたが、その表情は非常に柔和だ。地に足をつけて“心のまま”に表現活動を続けてきたことによって出会った本作。もともと唯一無二の存在感で日本映画界に多くの爪痕を残してきた彼が、ハリウッドの巨匠とのコラボで、さらなる輝きを放つ姿を思う存分堪能したい。

ヘアメイク:KATSUHIKO YUHMI(THYMON Inc.)

映画『沈黙−サイレンス−』は1月21日より全国公開

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