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アカデミー賞事件簿 受賞スピーチ妨害の真相

第82回アカデミー賞

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プロデューサーのエレノア・バーケットとロジャー・ロス・ウィリアムズ監督
プロデューサーのエレノア・バーケットとロジャー・ロス・ウィリアムズ監督 - Richard D. Salyer / (C) A.M.P.A.S.

 3月7日(日本時間8日)に開催された第82回アカデミー賞授賞式の視聴率が、2005年以来の高い視聴者数であったことが発表されたが、アメリカだけでなく、世界中の視聴者が授賞式で不思議に思った受賞スピーチの舞台裏が明らかになった。

 そのハプニングが起こったのは、キャリー・マリガンゾーイ・サルダナがプレゼンターを務めた短編ドキュメンタリー賞の受賞時のこと。ゾーイにより、受賞映画『ミュージック・バイ・プルーデンス(Music by Prudence)』(原題)のタイトルと、ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督とプロデューサーのエレノア・バーケットの名前が読みあげられ、ウィリアムズ監督がうれしそうにステージへ向かうときだった。

 紫のドレスを着たバーケットは通路側に座っている人物のせいで客席から出られない様子。そのせいで時間がなくなりステージ上で、一足先にオスカー像を手にしたウィリアムズ監督が感謝のスピーチを始めたときにいきなり、バーケットが横から乱入しマイクを奪うという事態になった。バーケットは取り上げたマイクで映画に出演したジンバブエのバンド「リヤーナ」の曲から参照したメッセージと、映画の裏に描かれている真実を知ってほしいと訴えたが、観客や視聴者は横からマイクを奪ったバーケットに唖然(あぜん)とするばかりだった。

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 今回の事件は、昨年9月に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードで、最優秀女性アーティスト・ビデオ賞を受賞したテイラー・スウィフトの受賞スピーチときに、泥酔したカニエ・ウェストがスピーチを妨害した事件と似ていることから、「カニエ・モーメント(カニエ・ウェスト的瞬間)」としてアメリカ国内の複数のメディアは評している。

 ウィリアムズ監督とバーケットの両氏が、Salonに対して語ったところによると、ウィリアムズ監督とプロデューサーのバーケットは、オスカーを受賞した映画『ミュージック・バイ・プルーデンス』(原題)の方向性に関して対立しており、裁判沙汰にまでなったとのこと。ウィリアムズ監督によれば、バーケットは1年近く前に、同作の製作から追い出され、プロデューサーの職をクビになっている。

 そのため、アカデミー賞以外の授賞式ではバーケットは招待も連絡もされず、激怒していたそうだ。だから、アカデミー賞ではバーケットも作品の関係者としてノミネートのリストには入ったものの、授賞式の開催側から1名のみが受賞スピーチを行えると通達されていたことから、ウィリアムズ監督は監督である自分が受賞スピーチを行うものだと考えていた。バーケットとウィリアムズ監督は誰が受賞スピーチを行うか事前に相談せず、受賞が決まり、バーケットは先に受賞スピーチを始めた監督に追いつこうとしたが、通路側に座っていた監督の母親の身体と杖によって妨害され、急いでステージへ迎えなかったとしている。

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 同作に関する方向性の問題は、友好的に解決したとバーケットは語っているが、受賞スピーチを聞く限り二人の対立は現在も続いているようだ。対立している点は、関節拘縮症(かんせつこうしゅくしょう)のために身体が不自由なシンガーソングライターのプルーデンスさんのみに焦点をあてるか、それとも彼女と仲間のミュージシャンで結成したバンド「リヤーナ」に関して描くかでもめたようで、監督と映画を配給したHBOはプルーデンスさんに焦点を当て、貧困や人種差別に立ち向かいながらもプルーデンスさんが音楽を楽しんでいる姿を描く、人々の励みとなる幸せな映画にしたそうだ。

 また、バーケットは自分が最初に映画のアイデアを出したと発言しているが、ウィリアムズ監督は真っ向から否定しており、このような意見の違いも二人が仲たがいした原因のひとつであると思われる。最後にウィリアムズ監督は、バーケットがカニエ・ウェストのように妨害行為を行ったことを恥ずかしく思うと話し、自分の母親がステージへ向かおうとしたのを妨害したという発言に対して、「わたしの母は、わたしを抱きしめるために立ち上がったのです。彼女は87歳の老人で、わたしの受賞に興奮していたのです」と妨害を否定した。受賞スピーチを述べることができなかったウィリアムズ監督は、映画の公式サイト上でスピーチの全文を公開している。

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 映画製作において、監督とプロデューサーが製作上の意見の相違で対立することはよくあることだが、映画人にとって最大の栄誉であるアカデミー賞授賞式でこのような妨害行為が行われることは、同作に登場したプルーデンスさんもバンド「リヤーナ」の仲間たちも望まないのではないだろうか。本年度のアカデミー賞授賞式での、一番後味の悪い場面であったといえよう。

『ミュージック・バイ・プルーデンス』公式サイト:http://www.musicbyprudence.com/
アカデミー賞公式サイトで公開されている受賞時の動画:http://oscar.go.com/video/index?playlistId=253172&clipId=253218

第82回アカデミー賞授賞式ダイジェストは3月14日、18:00よりWOWOWにて放送

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