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青山真治監督、日本では表現が制約される…「退廃姉妹」映画化に海外出資を求める【第63回カンヌ国際映画祭】

青山真治監督、日本では表現が制約される…「退廃姉妹」映画化に海外出資を求める
映画の使命について語る青山真治監督-カンヌにて - Phoro:Harumi Nakayama

 青山真治監督が、島田雅彦の小説「退廃姉妹」を映画化することがわかった。青山監督は第63回カンヌ国際映画祭で行われている製作支援システム「アトリエ」に同作品で参加しており、現在、海外との国際共同製作を進めるために連日、各国映画会社とのミーティングに追われている。

 同小説は、米兵相手の娼館を営む姉妹を通して戦中・戦後の日本の混乱期を描いた大河ロマン。2005年に出版され、企画が実現すれば、日本初の島田文学の映画化となる。もともとは別監督で進んでいた話だったが制作がとん挫。脚本を担当した荒井晴彦から青山監督に仕切り直しを託されたという。

 快諾した理由について青山監督は「ちょうど原作を読んだころに母親が脳梗塞で倒れて、今は僕の名前がかろうじてわかる程度に記憶が薄れてしまった。母は小説の姉妹と同世代。その年代の人たちの記憶が消えてしまう前に映像として残しておきたい。記憶の詮索(せんさく)も映画の使命ではないかと思ったんです」と説明する。

 日本が舞台の話だが、青山監督が海外の製作会社にパートナーや出資を求めているのには理由がある。娼婦の話ゆえ当然、女優は裸体をさらす必然性がある。特攻や戦犯といったタブー視されがちな戦争の闇の部分を描いていることも本作の魅力だ。だが、今のテレビ局や芸能プロダクションが製作委員会として参加する日本映画の製作体制では“大人の事情”で制約されることが多々出てくる。そんなしがらみから解放され、自由な映画作り目指した結果の選択だ。

 青山監督は「2008年に『LE  PETIT  CHAPERON  ROUGE』という中編をフランスで撮ったことが大きい。予算も時間もない中、それでもこの映画を作りたくて頑張ってくれた人たちと出会ってしまった。だから『この映画に参加できなければわたしは死ぬ!』くらいのやる気があるフレッシュな役者と組みたい。その女優選定はもちろん内容も、おれだけでなく荒井さん、島田さんも絶対に譲れないものがある。この企画に関しては、おれはオレのやり方でやりたい」と語気を強めた。

 「アトリエ」での評判は上々だ。2005年にスタートした同システムには今回、世界各国から15本の企画が参加。中でも『EUREKA』と『月の砂漠』と2度、同映画祭コンペティション部門に参加している青山監督の知名度と実績は抜群。また『退廃姉妹』の英語タイトル『デカダント・シスターズ』が何とも言えない甘美な響きを放ち、ミーティングの申し込みが殺到している。青山監督は「一つの反戦国がどんなバイタリティーを持って立ち上がっていったのか。世界中で戦争が続いている今、重要なテーマだと思う。ドイツやフランス、カナダの製作会社が特に興味を示してくれていますが、彼らの、外国人からの視点でシナリオにいろいろと提案してくれることが非常に参考になる。それがアトリエに参加したことの、一番有意義な事でしたね」と笑みを見せる。今後正式に契約などを交わしてから具体的な製作準備に入り、来年夏ごろの撮影を目標としているという。

 青山監督と言えば、先の2作品のほか『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』も同映画祭ある視点部門に選ばれており、今回が4度目のカンヌとなる。また違った形での参加について青山監督は「自分の作品を持って来ているときと今回とでは緊張感が全然違う。旧市街のある丘の上にお城があることに、今回初めて気付いた(苦笑)」と語り、カンヌの魅力を再発見しながら充実した日々を過ごしている様子だった。(取材・文:中山治美)


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