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加藤登紀子、政府にもの申す!「戦争に勝利・敗北はない」東京大学・安田講堂で安保熱く語る!

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熱い思いを語る加藤さん
熱い思いを語る加藤さん

 1960年6月15日に起こった日米安全保障条約闘争の国会デモからちょうど50年を迎えた15日、シンポジウム「60年安保闘争の記録と記憶」が東京大学・安田講堂で行われ、社会学者で東京大学大学院人文社会系研究科教授の上野千鶴子氏、ノンフィクション作家・保阪正康氏、社会学者・小熊英二氏、ドキュメンタリー映画『ANPO』のリンダ・ホーグランド監督が参加した。会場は安保闘争をリアルタイムで体験した年配者のみならず、20歳代~30歳代の若い世代など約1,000人の観客で埋まった。

 イベントは、ホーグランド監督が、デモ参加中の6月15日に死亡した東大生・樺(かんば)美智子さん(当時22歳)の命日にあたるこの日に、映画を上映したいという熱意から実現したもの。米国ニューヨーク在住のホーグランド監督は、日本映画の英語字幕翻訳の第一人者としても知られ、子ども時代に愛媛や山口で暮らした日本ツウ。映画は、安保闘争を題材にした写真や絵画といったアートを切り口に戦後の日米関係のゆがみを振り返るもので、写真家・石内都氏、画家・中村宏氏、演出家・串田和美氏など約30人のインタビューが収められている。ホーグランド監督は「わたしは1960年について語る資格のない米国人ですが宣教師の両親のもとに日本で生まれ、日本映画にあこがれて翻訳の仕事に携わってきました。その中で、大島渚監督や今村昌平監督の作品を通して、1960年に国民が大きなトラウマを抱える事件があることに気付きました。あの成瀬巳喜男監督の作品も1960年を境にトーンが変わっている。そのときに濱谷浩氏の写真集「怒りと悲しみの記録」(※安保闘争の記録写真集)を紹介され、そのときの怒りや挫折から生まれたアートという文化遺産の存在を知りました。それらを通して日本人の主観的な体験を記録したい。米軍が駐留している苦痛や、日本に抵抗の歴史があったことをアートを通して世界に発信したいと思った」と語り、約15分のダイジェスト版を上映した。

 シンポジウムは上野氏の司会で「安保闘争は戦後最大の社会運動であり、失敗に終わった反政府運動から何を学ぶのか?」を中心に話し合われた。同志社大出身で当時、京都から国会前でのデモに参加したという保阪氏が体験談を交えつつ、「当時の人たちは安保条約の内容を詳しく知らなかった。しかし、なぜあれだけのデモになったかというと、新安保条約を強行採決した岸信介首相の存在があった。多くの人の戦争に対する嫌悪感が岸にかぶさり、『あの人が戦争の責任者であり、二度と戦争を起こさないためにもあの人の存在が問題なのだ』という意識が、人々が運動を起こすバネとなった」と分析。また保阪氏は著書
「六〇年安保闘争の真実」を発表しているが、「記録というものを父とし記憶を母として教訓という子どもを生む。それを育てていくのがわたしたち」と歴史の中で、安保闘争が起こった意義を振り返る必要性を説いた。

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 続いて、「〈民主〉と〈愛国〉」などの著書がある小熊氏は「安保闘争は、終戦の15年後に起きたということが大きい。戦争の生々しい記憶を皆が共有し、反戦という気持ちが人々を駆り立てた。ではなぜ記録するのか? 戦争の記憶と結び付いた安保闘争は、現在生きているわれわれが思い出し続ける必要がある。特に安保の記憶は沖縄に凝縮されており、今回の普天間基地移設問題から鳩山政権転覆へとつながっている。つまり安保や戦争の問題を振り返らなければ、沖縄に刺さったトゲを抜くことはできない」と力説した。司会に徹していた上野氏も「この時期、鳩山政権が転覆した直後にこうした集会を開く歴史的意義を強く感じます。鳩山さんがしくじったのは、県外移設を唱えたせいで、沖縄住民の希望というパンドラの箱を開けてしまった。そのせいで他の地域からの反発を受け、これまで沖縄県民にいかなる犠牲を強いてきたかを国民が実感できるきっかけを与える偉大な功績を残した」と自論を展開。これに触発された小熊氏も、「だいたい米国は、日本に基地を置く必要性も理由も何一つ説明しない。これで対等な日米関係といえるのか」とほえた。

 シンポジウム終盤には、映画『ANPO』にも出演している歌手・加藤登紀子が特別ゲストとして登場。1960年の国会デモに16歳の女子高生ながら駆け付けたという加藤にとっては、シンポジウムで度々使われた「失敗に終わった反政府運動」や「敗戦」という言葉が引っ掛かったよう。「『失敗に終わった60年』と上野さんはおっしゃった。でも戦争に勝利・敗北はない。勝利しても死ぬ人は死ぬ。わたしは、60年安保は革命は起こせなかったし、止めることもできなかったけど、たくさんの素晴らしい瞬間を、エネルギーを、わたしたちに与えてくれたと思っています。そこから生まれたと思っている人もいるワケで、政府の方は抹殺できたと思っているかもしれないけれど、樺さんたちの信念は、わたしたちの魂に生き続ける力がある。それは敗北ではなく勝利です。心の中に永遠の輝きを残すという勝利を、わたしたちは経験したかもしれない。だから、そんなに簡単に勝った、負けたで歴史を語ってほしくない」と出席者たちを一喝し、会場から「そうだ!」の声援と大拍手を浴びた。そして加藤は、樺さんが遺した詩を朗読。最後は出席者全員で樺さんへの1分間への黙とうをささげて、イベントは大盛況のうちに終了した。(取材・文:中山治美)

映画『ANPO』は今夏公開予定

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