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911後のアメリカは保守的…『裸のランチ』をリスペクトする新鋭がバロウズを熱く語る

911後のアメリカは保守的…『裸のランチ』をリスペクトする新鋭がバロウズを熱く語る
ヨニ・ライザー監督−第54回ロンドン映画祭 - Photo:Yukari Yamaguchi

 第54回ロンドン映画祭でヨーロッパ・プレミアが開催された『ウィリアムSバロウズ:ア・マン・ウィズイン/William S. Burroughs: A Man Within』(原題)のヨニ・ライザー監督が、バロウズ人気の映画界について独自の見解を聞かせてくれた。

 話を聞いたのはプレミア翌々日となる19日。ちょうど1週間後の26日には、本映画祭で、もう1つのバロウズ関連作品『ハウル/Howl』(原題)のイギリス・プレミアも開催される。「ほかにも3つくらいバロウズ関連の映画が出るよね。今の状況が(バロウズの出た)50年代と似ているからじゃないかな。911以降アメリカでは保守的になっている。50年代にヒッピー、ビートニクが出たのと同じような感じで、パンクロックバンドも出てきているし」とライザー監督は分析する。「僕自身は高校時代に読んだ『裸のランチ』(バロウズの小説)にショックを受けた。それからバロウズのプロジェクトを始めて、インタビューしたりするようになった」というのが本作につながった。「この映画にとりかかってから完成までは5年になるよ」というライザー監督は、現在26歳の新鋭だ。

 本作は、ビートニク詩人バロウズの貴重な映像と、周辺の人々のインタビューからなるドキュメンタリー。アレン・ギンズバークやアンディ・ウォーホールから、カート・コバーン、レオナルド・ディカプリオまでの登場人物を並べて見るだけで、どれほど長い間、幅広い分野の人々に影響を与えてきたかがよくわかる。中でも「惚れちゃってたのよ」というパティ・スミスとのコラボシーンなどは興味深い。パンクの女王と呼ばれるスミスが形作られた発端を見るようだ。バロウズ自身による自作の朗読も味わい深い。

 銃器マニアでもあったバロウズは、妻を誤って射殺してしまう。ドラッグやアルコールに溺れたバロウズ本人より、その後を追うかのようにアルコール中毒になった息子を先に亡くしてもいる。本作は、そのバロウズが最後に残した、究極の痛み止めは愛である、という意味の言葉がエンディングを飾る。ロマンチックな詩人ではなく、むしろその対極にあった、ライザー監督が「針のように鋭い」と評するバロウズがたどり着いた境地と思うと、その意味の深さが響く。「その言葉は撮影を始める前から、最後にもってこようと決めていた。彼が最後に書いた言葉なんだ。それ以上にエンディングにふさわしいものはないよ」とライザー監督。

三つぞろえのスーツに痩身をつつみ、辛らつな言葉を吐くバロウズその人に直にふれられる本作は、バロウズ入門にもよさそうだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)


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