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ごみから生まれたアートとは?ブラジル人芸術家ヴィック・ムニーズが語る!

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(左から)プロデューサーのアンガス・エインズレー、ブラジル人芸術家ヴィック・ムニーズ、ルーシー・ウォーカー監督、歌手のモービー
(左から)プロデューサーのアンガス・エインズレー、ブラジル人芸術家ヴィック・ムニーズ、ルーシー・ウォーカー監督、歌手のモービー

 映画『カウントダウンZERO』や『ブラインドサイト~小さな登山者たち~』でメガホンを取ったルーシー・ウォーカー監督が、新作『ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡』(原題『Waste Land』)について、ブラジル人芸術家ヴィック・ムニーズ、プロデューサーのアンガス・エインズレー、そして作曲を担当したミュージシャンのモービーと共に語った。

ルーシー・ウォーカー監督映画『カウントダウンZERO』場面写真

 同作は、現在はニューヨークで活躍しているブラジル人芸術家ヴィック・ムニーズが故郷ブラジルに戻り、南米最大のごみ処理場で働く労働者たちと出会い、彼らと共にごみを利用して製作したアート「ピクチャーズ・オブ・ガベージ」をドキュメンタリーとして収めた作品。この映画は、東京国際映画祭にも出展されていた。

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 まず、製作のきっかけについて芸術家のヴィックは「プロデューサーのアンガスが、僕のアートワークを映画にしたいという企画を持ち込んで来たんだ。個人的には、アートを扱ったドキュメンタリー作品はあまり好きじゃなくて、乗り気ではなかったんだが、アンガスがルーシー監督のこれまでの作品を送ってくれたんだ。その彼女の作品群は、主観的な撮影をしていないため、彼女が撮影途中で全く姿を消してしまったような感覚にさせられ、まるで監視カメラで撮影しているような撮影手法になっていた。僕は、そんな彼女の作品に惹かれ、参加することを決めたんだ」と語った。

 時々、人の死体も転がっているような悪い環境のごみ処理場で働く労働者は、他で働くことは考えなかったのか、という点について「ここで働いている人たちの多くは、家族がすでにそこで働いていた人たちとか、家計が厳しく子供の頃から働かされた人たちが多いんだ。つまり、ごみが家族の歴史でもあるんだ。ただ、なぜ彼らが他で働くことを考えないかというと、労働者としてユニオンの属しているからでもあるんだよ。もともと貧しく育ってきた彼らにとって、一つの保証は大きな理由になる」とあまり選択肢がないこともヴィックは述べていた。

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 ルーシー監督は、このごみ処理場で働く労働者について「ここで働くスエレムという若い女性は、自分がこのごみ処理場で働く環境は子供には良くないと思い、母親に自分の子供を預けているけれど、実際にはその子供が預けられた場所というのも、13歳の子供がドラッグを売買しているようなヒドい所で、むしろごみ処理場の回りの環境よりも悪いくらいなの。最終的に、スエレムは自分の子供たちと暮らすことになるけれど、今度の作品でヴィックのアートに携わったごみ処理場で働く人たちの何人かは、彼との共同作業で別世界に触れてしまい、このごみ処理場で働くことに疑問を持ち始め、新たに別の職に就く人もいたわ。ただそれでも、このごみ処理場で働いていたことに、みんな(労働者は)誇りを持っているの」と労働者の多くは、この映画にかかわったことで、自分を見つめ直すきっかけを与えられたようだ。もちろん、その後もごみ処理場で働き続けている人達もいる。

 歌手のモービーは、この映画の参加について「実は、監督のルーシーとは友人で、数年前に彼女から直接曲の依頼を受けた際に、ブラジル人の人々がごみからアートを制作する映画だと聞かされていたんだ。そのときは、おそらく僕ら友人だけが見るような小さな映画になると思っていた。ところが、完成された作品を観たら、すごく力強く、美しい作品に仕上がっていたのには驚かされたよ! 特に試写のときは、批評が厳しいここニューヨークの住人たちの心をつかんでいたんだ! この映画が素晴らしいのは、製作をし始めた段階では全く予想できなかった映画に仕上がっていることだと思う。僕は、これまで色々な作品にかかわってきたが、この作品が最も誇りに思える作品になったよ」と笑顔で語っていた。

 この作品を観ると、ごみも一つの人間の歴史を象徴しているように思えた。そのごみから生み出されたアート作品は、ある意味究極の芸術と言えるのかもしれない。(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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