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サンダンス映画祭のグランプリ作品『ウィンターズ・ボーン』、デブラ・グラニック監督に聞く!

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デブラ・グラニック監督
デブラ・グラニック監督

 今年のサンダンス映画祭でグランプリを受賞し、先日発表されたインディペンデント・スピリッツ・アワードでも、話題作『127アワーズ / 127 Hours』(原題)や『ブラック・スワン /Black Swan』(原題)を抑え、7部門で最も多くノミネートされた新作『ウィンターズ・ボーン / Winter's Bone』(原題)について、デブラ・グラニック監督が語った。

 同作は、17歳のリー(ジェニファー・ローレンス)は、ミズーリ州のオザーク高原で暮らしていたが、ある日メタドン(麻薬中毒者の治療に使用される鎮痛剤)の密造で警察に捕まっていた父親が、自分達の家を保釈の担保にして失踪してしままっために、保安官がやってきて、父親が裁判所に出頭しなければ、家族の家を没収すると告げられる。そこでリーは、幼い妹や弟、さらに麻薬の後遺症で口を聞くことさえできなくなった母親を置いて、父親を捜しに闇の社会に足を踏み入れていくというサスペンス・スリラー作品。

 この映画の舞台となったオザーク高原について「まず気付いたことは、西海岸や東海岸の高い文化と違って、非常に保護されている地域であるということね。すごく時間をかけて、物事が動いている感じがしたの。実際にオザーク高原に住んでいるほとんどの人たちは、オザーク高原から外に出たことさえない人たちが多く、彼らは自分たちの文化や方言を非常に大切にしているの」と、その土地柄について語った。そんな中で、デブラはあることを発見したらしい。「1つ面白いと思ったことがあって、それはオザークにある学校で教えている英語の教師は、生徒たちにエッセイを書かせた後で、それらを読んでいる際に、彼らのエッセイにOZ(オザーク)のしるしを付けているの。要するに、そのしるしがエッセイに付けられていたら、その表現や言葉が、オザークの地域でしか通じない方言であることを生徒たちに教えているのよ」と語り、さらにデブラは、同じアメリカに住みながら、全く異国文化を学んだような体験だったと付け加えた。

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 おそらく、難しいと思われるメタドンの売買がされている闇市場のリサーチについて「私達はジャーナリストじゃないから、実際に売買されているような危険な場所には行かなかったの。けれど、実際にヘロイン中毒者で、その後メタドンを使用して、なかなか抜け出すことのできなかったサバイバーたちを対象に話を聞くことはできたの。ただ、その中にはもちろん回復していても、後遺症でちゃんとしたコミュニケーションが取れない人たちもいるから、実際には現地(オザーク)の保安官にも助けてもらいながら、対象者(サバイバー)を捜してもらったわ。それ以外には、原作を書いたダニエル・ウッドレルが、我々が理解できない闇市場などの箇所を補強してくれたの」と説明した。このメタドンという薬は、確かに麻薬中毒者の治療に使用される鎮痛剤ではあるが、ある意味ヘロインよりも、抜け出すことが難しいと言われている、依存性の強い薬でもあるそうだ。

 映画内では、女性の出演者が多く、主人公も女性であるにもかかわらず、恋愛設定さえないという、非常に稀な作品であることについてデブラは「それは、原作者のダニエル・ウッドレルのおかげね。彼は、非常に力強い女性を描くために、あらゆる女性のヒロインを研究しながらこの主人公の女性を書いたらしいわ。彼の話では、実際にこの主人公のモデルとなった人物は、2人の子供を持った貧しい暮らしをしていた母親らしく、実際にその母親が少ない金額で子供たちと、どう暮らしているか頭で彼らの気持ちになりながら書いていたらしいの。私自身も、女性の役が恋人役や脇役のような扱われ方をしていない作品が好きだから、今回のダニエルの原作には、非常に惹かれたの」と明かした。

 映画は、寒々としたオザークの広大な土地を背景に、父親を捜す娘リー役をジェニファー・ローレンスが見事に演じている。現在、ジェニファー・ローレンスのアカデミー賞主演女優賞ノミネート候補の可能性も含め、いくつかの部門でオスカー戦線にかかわってくる作品と見られている秀作である。

 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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