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杉浦太陽が思わず涙!故・田中好子さん最後の主演作『0(ゼロ)からの風』で息子演じ「ありがとうと伝えたかった」

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涙がほほをつたう杉浦太陽
涙がほほをつたう杉浦太陽

 1日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで故・田中好子さん最後の主演映画『0(ゼロ)からの風』の追悼上映が行われ、田中好子さん演じた母親・茂木圭子の息子である茂木零を演じた杉浦太陽と、監督の塩屋俊が登壇。田中さんへの熱い思いを吐露した監督の姿に杉浦が涙ぐむという一幕があった。

 4月21日、乳がんのために田中さんが急逝してから10日。20年近い闘病生活を感じさせなかったその明るい笑顔と、彼女が最後まで見せた凛とした強さを改めて見せ付けられ、日本中が悲しみに包まれた。そんな中、彼女を偲ぶべく最後の映画主演作の追悼上映が決定した。2007年に劇場公開された本作は、悪質な飲酒運転をした加害者によって息子を亡くした母親が約37万人もの署名を集め、「危険運転致死傷罪」(最高刑期20年、併合加重の場合は最高30年)を新設し、息子が志望していた早稲田大学に入学するまでに至る実話を基にした物語だ。田中さんは主人公の茂木圭子役を全身全霊で演じており、病を感じさせないパワフルな演技は観る者の心を打つ。

 壇上に立った塩屋監督は「スーちゃん、あなたのラストメッセージ、堪(こた)えました。僕はあなたと次回作の構想を話して、また映画を一緒に撮ろうと約束をしましたね。でも僕は決めました。あの作品はキミがいないと成り立たないので封印します。天国で最高のスタッフとキャストをそろえて準備します。またカメラの前で会いましょう。(告別式で、田中さんが被災地への想いをメッセージとして流したことを受けて)あなたの遺志を継いで、世の中に貢献できるような作品を作りたいと思います」とメッセージを読み上げた。すると杉浦の瞳からはみるみるうちに涙があふれてきて、ついにはほほに流れ落ちた。撮影後もメールなどで田中さんと交流を続けていたという杉浦は、こみ上げる思いを必死にこらえながらも「監督のメッセージを聞いて、当時のことや田中さんの笑顔を思い出してしまいました。(役名の)零くん、零くんと、今でも聞こえそうな気がします。本当にすてきな母さんでした。誇りに思っています」と絞り出すようにコメントを発した。

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 その後、報道陣の取材に応じた塩屋監督は今回の上映について、「田中さんは素晴らしい女優だったと日本全国に伝えたかった。今村昌平監督や今井正といった日本映画の巨匠たちの中で培った力を、僕はたまたま受け継いで映画を作っただけですが、彼女は現場の太陽でした。彼女が来ただけで、われわれが和むし、豊かな気持ちになれる。それが彼女の存在感だし、喪失感は埋められません」とコメント。さらに今回の母親役を演じるにあたり、撮影現場では、息子を死に追いやった加害者役の袴田吉彦を徹底的に憎んでいたとのことで、「この役は過去で一番、呼吸ができないほどにつらかったと聞いています。最後の撮影が終わってから、車中で袴田さんに『無視するような形になってごめんなさい。どうしてもあなたの役を許せなかったから』と謝っていたことがありました」と明かす塩谷監督。それはまさに全身全霊で役に打ち込む田中さんならではのエピソードだった。

 そして最後に田中さんへの想いを聞かれた杉浦は「もう母さんがいないんだという思いがあって、観るのもつらかったんですが、その分、田中さん想いが詰まった映画です。また会えると思っていたから、あえて言わなかったんですが、ありがとうと伝えたかった。田中さんには天国で見守って欲しいです」と振り絞るようにコメントすると、そのまま会場を後にした。

 本作の収益金の一部は、田中さんの遺志を受け継ぎ、被災地のために寄付されることが発表されている。(取材・文:壬生智裕)

田中好子さん追悼上映『0(ゼロ)からの風』はTOHOシネマ六本木ヒルズほかにて上映中

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