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おすぎ、GWに本音で薦める映画は『四つのいのち』…震災を経験した今だからこそ観るべき映画

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映画評論家おすぎ
映画評論家おすぎ

 人間、動物、木、木炭という四つの命を通して、この世に生きるすべての命のつながりを紡いだ映像詩映画『四つのいのち』を映画評論家のおすぎが「こんなときだからこそ観るべき映画」として絶賛している。

映画『四つのいのち』場面写真

 ゴールデンウィーク(以下GW)もそろそろ終わり。土日を近場で締めくくるのに絶好の娯楽の一つ、映画も選択肢の一つに入れてみるのはいかがだろうか。そんなときに、ストーリーの先が読めてしまう大作映画はもう見飽きているという方にはぴったりな、おすぎがGWの映画として薦めている作品がある。これはおすぎが雑誌の対談でポロッともらした作品だけに、宣伝活動でもなく本音で薦めている映画といえよう。

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 それは本年度カンヌ映画祭・監督週間で、回を追うごとに会場に観客が殺到した、ミケランジェロ・フランマルティーノ監督の長編第2作、映画『四つのいのち』だ。おすぎは本作を「こんな時だからこそ、この映画を見てほしいの」と絶賛。「こんなとき」とは「震災後の日本」のことだ。3月11日に起きた東日本大震災は、われわれ日本人が今後どう生きていくべきかいろいろな意味での課題をつきつけられている。本作はそんな状況を大上段に構えて危機を警告する映画ではなく、観て感じる映画だ。

 舞台は南イタリア・カラブリア地方。山羊の群れを追う年老いた牧夫は、ある日、静かに息を引き取る。次の日、仔山羊が誕生する。初めての放牧で群れからはぐれてしまった仔山羊は、山中の大きな樅の木の下で眠りにつく。季節は流れて春になると、その大木は切り倒され、村の祭りの象徴として使われる。そして祭りが終わると、伝統的な炭焼き職人によって木炭へと生まれ変わる……人間、動物、植物、炭(鉱物)と「四つの生命」が連なっていく様子が、セリフを一切排して緩やかにつづられていくという映画だ。

 本作のフランマルティーノ監督は、自然界の中で特別なわけではなく、4つの要素はみな同列であるという思いを込めており、「今、もう一度人間以外のものとのつながりをみつけたいと多くの人が考えていると思います。自分たちは切り離されていて、孤独で、すべての中心だという考え方がいかに不幸であるかと感じているのではないでしょうか。そういうことを考えるきっかけにこの作品がなればと思います」と語っているところにこの作品の奥深さがある。

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 映画評論家のおすぎは本作を観て「穏やかな空気があふれる不思議な映画に、心が落ち着きました。こんなときだからこそ、この映画を子どもたちに見せたいの」と震災の映像をテレビで観て、被災した人たちのことを思って疲弊した心に、安らぎを与える映画であると評した。

 しかし、最近の映画のように次から次へとめまぐるしく場面が転換し、物語が進む映画ではない。そしてセリフもまったくない。そんな本作を観たおすぎは当初、「最初は『何を言いたいの?』と考えたわ」というのが本作への第一印象だったらしいが、「今回の大震災を体験して、この映画を観て感じたのは、人間は地球をいじめちゃダメってこと。自然の中で人間が生きる原点を見せてもらいました」(JUNON5月号より抜粋)とこの映画が訴えるメッセージをかみ締めたという。そんな、かめばかむほど味わいがにじみでてくる作品だ。

 東日本大震災という、なす術もない自然の猛威に襲われた日本人にとって、今後、地球の大自然とどう共存していけばいいのか考えずにはいられない。そんなヒントの一端が見つかるかもしれない。(編集部・下村麻美)

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