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『鉄コン筋クリート』のマイケル・アリアス監督、東日本大震災以降、被災地と東京を往復7回…支援や国内外へ現地レポートを発信

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ケバブ無料配布中のマイケル・アリアス監督(左)、アリアス監督の義兄の阿部一臣さん(右)
ケバブ無料配布中のマイケル・アリアス監督(左)、アリアス監督の義兄の阿部一臣さん(右) - 撮影:Kiyoshi Endo 遠藤潔司

 アニメ『鉄コン筋クリート』のマイケル・アリアス監督が3月11日の東日本大震災以降、積極的に被災地入りし、ボランティア活動を行っている。6月18日まで、仕事の合間をぬって被災地と東京を往復すること7回。電話インタビューに応じたアリアス監督は「先日、久々に米国・ロスの実家に帰ってニュースを見たら震災の話題は流れず、取り上げられたとしても福島第一原発事故のニュースぐらい。日本でも原発のニュースが中心になっているけど、もっと被災地の方々の現状を知って欲しい」と米国ロサンゼルス発の情報サイト「Giant Robot」などを通じて、国内外へ現地レポートを発信している。

 アリアス監督が最初に被災地入りしたのは、3月14日のことだった。アリアス監督の親類が宮城県仙台市や多賀城市、女川町など津波の被害に遭った地域に多数住んでおり、ずっと連絡が取れず安否も分からないという不安な日々を過ごしていたという。そんな時、ちょうどオーストラリアのテレビクルーから被災地でのガイドと通訳を依頼されたことから、掻き集めた救援物資も積んで仙台市若林区から多賀城市、石巻市、女川町、南三陸町と、車中泊や登米市役所のロビーで寝泊りしながら沿岸部を北上したという。アリアス監督は「その間に義兄弟と連絡が取れて、幸い、親戚の無事は確認できました。しかし行くところ行くところ、どこもショッキングな光景ばかり。見慣れた街は破壊され、安否情報もなかなか入って来ず、途中で精神的におかしくなりそうになりました。被災した方々は声を掛けても話もできないような状態で、何もできない自分たちがここにいるのは邪魔なのではないか? という思いにもなった」と当時の心境を振り返る。

 無力感に打ちのめされたアリアス監督だったが、国内外の友人たちに奮い立たされた。『ノルウェイの森』のトラン・アン・ユン監督、米アニメ『アイス・エイジ』の製作総指揮者クリストファー・メレダンドリ、米映画『カポーティ』のプロデューサーであるキャロライン・バロン、そして『鉄コン筋クリート』の脚本家アンソニー・ワイントラーブといった仲間たちから「何か協力できないか?」というメールが多数届いたという。そこでアリアス監督はファンドを設立し、友人たちから送られた募金計100万円で被災地支援を行うことを決意。ライフラインが復旧していないエリアに灯油や水などの救援物資を届けるほか、義兄の阿部一臣さんが仙台市内でトルコ料理ケバブの移動販売ローヤル・ケバブを営業していたことから協力を要請し、ケバブとソフトクリームを無料配布することを思い付いた。当時は現地で材料を手配できなかったため、アリアス監督自ら東京の知人を頼って材料の調達と仕込みをし、4月14日には女川第一小学校の給食として300食を子どもたちに届けた。

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 また6月17日、18日には、被災地での無料映画巡回上映を行っている「にじいろシネマ」のメンバーと一緒に宮城県気仙沼市の唐桑さんさん館と東中才館を訪れ、映画上映の合間に同じくケバブとソフトクリームを振舞った。残念ながら上映作品はアリアス監督の作品ではなく、『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』『釣りバカ日誌20 ファイナル 』『ドラえもん のび太の恐竜』『ナイト&デイ』『SKE48 3Dシネマライブ vol.1 「制服の芽」公演2011』の5作品。アリアス監督も「『鉄コン筋クリート』はアニメとはいえ子ども映画じゃないしね。『ヘブンズ・ドア』も主人公が死へ向かう切ない話だから、今、被災者に見て頂くのはどうかと(苦笑)。皆の好みもあるからね」と上映作品に理解を示している。その分、アリアス監督のお気に入りの店直伝のケバブも、マンゴーや抹茶味など6種類を用意したソフトクリームも大好評で、おかわりする人も多数出たという。

 アリアス監督は「さんさん館には4月上旬、ロシアのテレビクルーを引き連れて一度訪れているんです。そのときは、裏の敷地で共同埋葬をする様子を取材するための訪問だった。なので今回、ケバブを喜んで食べる子どもたちの笑顔を見られて良かった」としみじみ語る。

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 ファンドの資金は気仙沼での活動で底が尽き、ケバブの無料配布もひとまず終了する。しかし今後も、個人的レベルでサポートを続ける予定だという。また現在、新作の企画を行っているが、いずれ作品にも活動を通して感じたことを反映させて行きたいという。アリアス監督は「今日本では、津波シーンなど、震災を思い出させるような映画をタブー視する傾向があるけど、僕はむしろタブーにしてはいけないと思う。芸術を通じて表現すれば、何かした得られるものがあると信じています。具体的にどう作品にするのか? は、まだ見えていないけど、津波のニュース映像にマヒし、いずれ震災の記憶も遠くなっていくなか、映画で伝えることができればと思っています」と今後も日本を拠点に、映像作家として決意も新たに活動していくことを誓った。(取材・文:中山治美)

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