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倉本聰、20年越しのドラマ「學」に込めた思い 「文明社会に疑問を投げ掛けたい」

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熱い思いを語った倉本聰
熱い思いを語った倉本聰

 元日に放映予定のWOWOW開局20周年記念番組 ドラマWスペシャル「學」の脚本を手掛けた倉本聰がインタビューに応じ、「『北の国から』のネガティブ版」と語る今作に込めた思いや、東日本大震災から半年以上経過した現在の日本について語った。

 本作は、放映から30年を迎えた今も根強い人気を誇る、北海道の大自然を舞台にした家族ドラマ「北の国から」を手掛けた倉本が、約20年前に執筆した幻のオリジナル脚本をドラマ化した作品。パソコン漬けの毎日の中、ふとしたはずみで殺人を犯し、心を閉ざした少年・學(高杉真宙)が、元南極越冬隊員で祖父の信一(仲代達矢)にカナダの大自然の中へ連れられ、過酷な旅の中で人間性を取り戻していく姿を描く。

 倉本は「大人と違って脳を形成中の子どもは、自然の中で過ごすべきだと思っている。この作品を書いた20年ほど前は、ちょうどパソコンなどコンピューターがはやりだしていた。脳を作る大事な時期にいる子どもの興味を、パソコンの方へと向けてしまっている文明社会に疑問を投げ掛けたくて、この作品を書きました。『北の国から』ではそういったことはできなかったので、『學』は『北の国から』のネガティブ版といえるのです」と今作を書いた経緯を明かした。皮肉にも、脚本執筆から約20年たった現在、コンピューターは普及し、インターネット依存症が社会問題になるほど。「(子どもを取り巻く)状況は悪化の一途をたどっていますね。このドラマは今の時代に合っていると思います」と複雑な表情を見せた。

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 そういった状況の中、今年の3月に発生した東日本大震災。「僕が最初にやったことは、福島の子どもたちを疎開させること。彼らを危険な状態にさらしたくなかった。福島の地方紙に、(北海道の)富良野へ子どもたちを受け入れると記事を載せたのです。そうしたらたくさん集まったけれど、やはりふるさとを捨てられず戻っていく人もいた。でも彼らは現地へ戻れないので、結局山形や新潟などに再疎開している状態です」と自身が受け入れた被災者の現状を明かした。そして「震災が起こった直後、ショックを受けた日本人はきずなとか言って痛みを分かち合った。でも今は関心がどんどん減っている。ボランティアもだいぶ減ったし、被災地のがれきを受け入れることを拒否する嘆かわしい人々もいる。今、被災地の人々は周囲からの関心が薄れていっていることに悲しみを感じているように見えますね」と震災から半年以上たった日本の現状に苦言を呈した。

 そんなふうに被災地への思いを語る倉本は、閉鎖されたゴルフ場に植樹をして元の森に戻す自然返還事業と、そのフィールドを使った教育プログラムにも力を入れていることで知られる。倉本に、「本作で大自然でのサバイバル術や人生訓を孫の學に説き、侍のように人生を締めくくる祖父の信一は、ご自身を投影しているのでは?」と聞くと「位置的に言えば、そういうことでしょうね」と軽くかわした後「もうじき77歳ですが、このぐらいの年になると人生への執着心は消えている。あと、僕らの世代はどうしても(戦争を経験しているので)人生の散り際を潔く迎えることは意識していますね」と照れくさそうにほほ笑んだ。「學」には、机上の空論ではなく、身をもって若者への教育や環境保護に長年取り組んできた倉本からの、次世代へ伝えたいメッセージが詰まっている。

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 「學」は壮大なカナダのロッキー山脈を舞台に、少年と祖父の旅を通して「人として生きていくこと」「自然と共存すること」とは何かを真正面から描くヒューマンドラマ。死期が近いことを知りながら、命を懸けて孫を人として立ち直らせようとする祖父・信一を仲代達矢、孫の少年・學を新人俳優の高杉真宙が演じる。そのほか八千草薫勝村政信らが脇を固めている。(古河優)

WOWOW開局20周年記念番組 ドラマWスペシャル「學」は2012年1月1日20時からWOWOWにて放送

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