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アカデミー賞ノミネート作品 東日本大震災からの復興を描いた『津波そして桜』とは?ルーシー・ウォーカー監督を直撃!

第84回アカデミー賞

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(左)ルーシー・ウォーカー監督、(右)プロデューサーのキラ・カーステンセン
(左)ルーシー・ウォーカー監督、(右)プロデューサーのキラ・カーステンセン

 映画『ブラインドサイト ~小さな登山者たち~』や『カウントダウンZERO』を手掛けたルーシー・ウォーカー監督が、東日本大震災からの復興を描いた新作ドキュメンタリー映画『津波そして桜 / The Tsunami And Cherry Blossom』について、プロデューサーのキラ・カーステンセンとともに語った。

ルーシー・ウォーカー監督映画『カウントダウンZERO』場面写真

 同作は、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の被災者たちが、復興に向けて歩み始めた姿を、日本の文化を象徴する桜の花とともに綴った39分の短編。本年度アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門でノミネートされている秀作。

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 制作過程について「まずルーシー監督が、『カウントダウンZERO』を日本で宣伝している同時期に、桜の花を描いた映像の詩を残そうと考えたの。そして、撮影も去年の3月3日から始めるつもりでいたの……。ところが、3月11日にあの東日本大震災が起きてしまった……。当然、桜の花を撮影している状況ではなくなって、われわれも震災後の状況を伝えようとする意思に変わっていったのだけれど、桜の花が日本の文化にもたらす意味合いから、ぜひとも桜の花も撮るべきだと考えたの」とプロデューサーのキラ・カーステンセンが語り、さらに撮影は撮影監督、通訳、監督と自分とで、本当に少人数で行ったことも明かした。

 そんな桜の花を、最初にルーシー・ウォーカー監督が撮影することに決めたのは、母親の影響によるものらしい。「わたしの母ががんでロンドンの病院の床に伏していたとき、死期が迫っていることにはお互い気づいていたの。そして、その部屋の窓から桜の木が見えていて、それを見たわたしの母が、今年は桜が咲くのを見られないかもしれないねとわたしに語りかけてきたの」と辛い体験を告白した。

 だが、ルーシーの母親も、自分の母親(ルーシーの祖母)をがんで亡くしていたそうだ。「わたしの祖母もまた桜の木を前にして、母親に同じことを話していたことがあったそうなの。でもそのときの母親は、その言葉が祖母が母親と人生や死について語り合いたかったサインだったことに気づかず、後で気づいて後悔したことをわたしに話してくれていたの。だから母親ががんになったときは、すぐにわたしは母親といろいろな話をする機会をつくったわ。でも、そんな母親もわたしが30歳のときに亡くなって、父親もその1か月後に亡くなってしまったの……」と悲痛のどん底に落ちてしまったそうだ。

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 ところが、両親を失ってからしばらく経ったある日「わたしはニューヨーク市内の道をマラソンしていたときに、道に連なっていった桜を見上げたことがあったの。そのときに、過去のことが走馬灯のようによみがえってきたけれど、その桜の木によって希望が持てて、ようやく心を落ち着かせることができ、さらにこれまでの気持ちを癒すことができたの」と彼女にとって、深い思い入れのある木であったため、家や家族を失った震災の犠牲者にも、震災場所で咲く桜の花が特別な思いで彼らの目に映っているのではないかと思ったそうだ。

 この映画の今後についてキラ・カーステンセンは「現在のところ、アメリカではTVチャンネル、HBOが放映権を獲得していて、テレビで放送することになると思う。一方日本でも、いろいろな機関や映画祭が興味を示してくれて、それぞれで上映することになるわ。でも、日本での映画としての配給権やテレビの放映権は、まだ決まっていない段階なの。ただ、これまでこの映画を制作する上で、アーカイブの映像の確保や、いろいろな意味で助けてもらったのが日本のチャンネル、NHKで、アカデミー賞も彼らはレッドカーペットを撮影することになっているから、NHKのようなチャンネルで放送されることを願っているわ」と語り、さらに日本を再び訪れると告げた。

 映画は、津波に飲み込まれ何もかも崩壊し、瓦礫だらけの荒廃した土地で、希望のように咲く桜の花が目に焼き付いてくる。そして、人の思いが詰まった一輪一輪の花が、徐々に揃って団結しながら満開し、一つの木(国)としてその復興を待ち続けているように思えた。我々は、また桜を咲かさなければいけない。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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