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第3回-薬物中毒患者、元受刑者、HIV患者らを受け入れられる社会へ【映画で何ができるのか】(1/4)

第3回-薬物中毒患者、元受刑者、HIV患者らを受け入れられる社会へ
映画『トークバック 沈黙を破る女たち』は9月12日まで横浜・シネマジャック&ベティで公開。今秋は広島・横川シネマ!!、12月6日からは名古屋・シネマスコーレで公開。

人を動かす映画

 良作には、心ばかりではなく、人を動かす力もある。ドキュメンタリー映画『トークバック 沈黙を破る女たち』の上映活動を見ていると、そんな映画の持つ力を信じたくなる。【取材・文:中山 治美】

 本作は、映像作家・坂上香さんが、元受刑者やHIV感染者らが自身の体験を芝居にする、米国のアマチュア劇団「メデア・プロジェクト:囚われた女たちの劇場」の活動を実に8年も追った記録だ。登場するのは、小さい頃から薬物と窃盗に手を染めてきたフィーフィー、虐待から生き延びるために薬物と売春を行ったアンジー、エイズで姉を亡くし自身もエイズ脳症と診断されたデボラなど、壮絶な人生を送ってきた人たちだ。坂上監督は粘り強い取材で、劇団員たちが過去をさらけ出すことで心を解放し、新たな一歩を踏み出していく軌跡を捉えている。犯罪からの更生の観点からも、貴重な映像資料だ。

 この映画の評判を聞き付けた広島・福山の市民サポーターは、「ぜひ上映してほしい」と福山駅前シネマモードに直談判した。採算が取れないと、当初は上映予定がなかったそうだが、熱意を買われて8月23日から29日までの1週間、1日1回の上映枠を獲得した。ただし、同劇場のディレクター岩本一貴さんから条件が出された。「150人集客すること」。サポーターたちは手分けして前売券を手売りし、連日トークゲストを招くなどして宣伝活動にいそしんだ。結果、上映期間中173人を動員。サポーターの一人で、前売券24枚を販売した主婦が言う。「自分がこの街で、それだけの人間関係を築いてきたのかと思ったらうれしかった」。

撮影中
坂上監督は8年かけて出演者たちとの信頼を築き、彼女たちの変化を追った。

監督が集団暴行を受けた経験から

 そもそも本作は、製作途中から市民を巻き込んできた経緯がある。中学時代に集団暴行を受けたことのある坂上監督は、「どうすれば人が暴力的になるのを緩和できるのか? どうすれば暴力を受けた人が新たな境地に立てるのか?」を問い続け、前作『Lifers ライファーズ 終身刑を超えて』(2004)を製作。米国・カリフォルニアの元男性受刑者たちが更生に力を注ぐ姿を追った。

 そして2006年から、今度は元女性受刑者たちを主人公にした『トークバック 沈黙を破る女たち』の製作をスタートさせた。だが劇団員との信頼関係を築くことに時間がかかった上に家庭の事情も重なり、撮影が延びて、資金が底を突いた。頼ったのがクラウドファンディング。10万円寄付してくれたコレクターを「市民プロデューサー」と名付け、編集途中段階の試写に参加して意見を言える「ワーク・イン・プログレス」という特典を付けた。日本では異例の試みだが、しかしこの挑戦が、結果的に多くの人に作品が支持されるようになった要因ではないかと坂上監督は振り返る。


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