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名匠の作品から探る、サスペンス映画のだいご味とは?

名匠の作品から探る、サスペンス映画のだいご味とは?
巨匠ハワード・ホークスのサスペンス映画『三つ数えろ』より - (C) Warner Bros. Entertainment Inc.

 映画からドラマ、小説に至るまで、日本人は無類のサスペンス好きといわれる。そこで、今回は映画史に偉大な足跡を残す巨匠たちの名作群を振り返りながら、サスペンス映画のだいご味を探ってみた。

 サスペンスの巨匠と呼ばれたアルフレッド・ヒッチコック。彼の作品は観客の予想を裏切る脚本の妙技もさることながら、緊張感を高め衝撃を与える視覚的な仕掛け、つまり映像スタイルが大衆を魅了した。カメラのトラックバックとズームアップを同時に行うことで「めまい」を視覚化した『めまい』(1958)や、シャワーシーンで細かいカットと素早いモンタージュを駆使した『サイコ』(1960)などはその代表例だ。

 また、戦後のハリウッドではモノクロの影や明暗を強調することで閉塞的な世界を描いた、フィルム・ノワールと呼ばれる犯罪映画が流行したが、この映像スタイルもサスペンス映画に多大な影響を与えた。ジュールス・ダッシンの『裸の町』(1948)やオーソン・ウェルズの『黒い罠』(1958)など、巨匠たちのサスペンスはフィルム・ノワールと切り離せないものが多い。視覚を通していかに恐怖を盛り上げ、観客の目を欺き、驚かせるのか。趣向を凝らした映像スタイルは、サスペンス映画の要だ。

 また、サスペンスといえば犯行トリックや謎解きにスポットが当てられがちだが、その土台となる人間模様やテーマをおろそかにすると、途端に説得力を失ってしまう。ハワード・ホークスの『三つ数えろ』(1946)は複雑に入り組んだ犯罪構造が観る者を困惑させるが、戦後アメリカの退廃したモラルや風俗、そしてヒーローとヒロインの一筋縄でいかない感情のひだをしっかり描いたからこそ傑作となり得た。

 サスペンス映画を得意としたフリッツ・ラングの作品も、反ナチスを鮮明にした『マン・ハント』(1941)や報われない愛の連鎖を描く『緋色の街/スカーレット・ストリート』(1945)など、社会的およびヒューマニズム的なメッセージ性が高い。それゆえ、見終えた後の余韻や印象も強烈なのだ。

 巧みに計算されたビジュアルと、謎解きに終始しないストーリー性。それこそが、優れたサスペンス映画の魅力なのかもしれない。(文・なかざわひでゆき)

映画『三つ数えろ』は9月24日午前7:00よりWOWOWシネマにて放送


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