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アメリカ人監督がガンに侵された日本女性を追った記録映画が登場

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レインダンス映画祭で質疑応答を行ったイアン・トーマス・アッシュ監督
レインダンス映画祭で質疑応答を行ったイアン・トーマス・アッシュ監督 - Photo:Yukari Yamaguchi

 ロンドンで開催された第22回レインダンス映画祭で、原発事故後も福島で暮らす子供たちを取り巻く厳しい現実にカメラを向けたドキュメンタリー『A2-B-C』で知られるアメリカ人監督イアン・トーマス・アッシュの新作『-1287』が上映された。本作は、ガンに侵された水飼和子さんが亡くなる1,287日前から、折に触れてインタビューしていったドキュメンタリー。

 和子さんは本作の冒頭では60代。子供たちも手を離れ、英語を勉強する主婦だった。アッシュ監督は「和子とは友達でした。乳がんが再発していると聞かされたとき、彼女の家族のことなど、いろいろな話をしました。最初、2人の間の会話だったのですが、それを皆さんとも分かち合いたいと思いました」と製作の動機を明かした。

 「今回は僕も出ようと思いました。和子はカメラの前でとても正直でいてくれました。撮れたことが光栄です」というアッシュ監督。カメラの後ろから和子さんにインタビューするだけでなく、「今度は僕の番、ちょっとカメラを持っていて」と和子さんにカメラを渡し、自分がカメラに向かって話す場面もある。

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 撮影者と被写体というだけでなく友人としてカメラを挟んでいる2人だが、会うたびに病状は容赦なく進行していく。「僕が戸惑ってしまうこともありましたが、それが真実であり、起こったことです。僕ではなく、和子の映画なので、そのまま残しました。和子の話を分かち合いたいと思ったのです。それが焦点でした」と振り返った。

 最期の様子を、アッシュ監督は「僕は東京から3、4時間もかかるところにいて、和子の家族が電話で『来ますか?』と言ってくれました。映画製作者としてなのか友達としてなのかわかりませんでしたが、ともかく行きました」と家族の協力に感謝しながら、その複雑な心境も理解している。「完成したときに、家族に『観ますか?』と尋ねたら、『まだ心の準備ができていない』ということでした。その気持ちは尊重したいです」という。本映画祭での上映がワールドプレミアとなったが、それを伝えた際に初めて「観たい」という返事をもらったと明かした。

 死を意識した和子さんは、監督に対して驚くほど率直に心中を語る。先を計画することができない状態でもあり、これまでを振り返る会話も多いせいか、闘病記というより、生きざまを感じさせるものとなっている。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)

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