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中国の児童誘拐テーマも自主検閲しすぎないスタイル ピーター・チャン監督が語る中国映画の実情

中国の児童誘拐テーマも自主検閲しすぎないスタイル ピーター・チャン監督が語る中国映画の実情
中国映画界の実情… ピーター・チャン監督

 1990年代、『ラヴソング』『君さえいれば/金枝玉葉』などラブストーリーの名作で香港映画の一時代を牽引したピーター・チャン監督。最新作『最愛の子』では、中国で年間20万人が行方を消しているという児童誘拐をテーマに、子を思う親の愛の深さを描き、2014年に本国で公開されるや、観客の涙をしぼって大ヒットを記録した。

 本作は、誘拐された男の子が3年後に農村で発見され、親元に戻るという実話をベースにしている。深刻な社会問題を扱っているが、監督が何より伝えたかったのは「人の情」と「相手の立場で考えること」の重要性。「この悲惨な物語には、さまざまな問題が絡み合い、出口がありません。そんな中にも、人と人が理解しあうことで生まれる希望を加えたかった。今の中国の問題は、みんな自分のことしか考えないこと。この映画では主人公が、前半の子をさらわれた夫婦から、後半では敵役であるはずの農村の育ての母にすり替わる構造になっていますが、それは視点の転換を撮りたかったからです」。

 劇中には「一人っ子政策」の縛りゆえに、2人目の子供を持つことで悩む被害者夫婦の姿も盛り込む。中国政府は昨年、同政策の全廃を決めたが、検閲の厳しい中国ではデリケートな要素だ。「おそらく、中国出身の監督ならば触れないと思います」とチャン監督は言う。「もちろん、検閲を考えると本当に撮れないものはあります。でも、“自主検閲”しすぎないのが私のスタイルです」。

 香港返還を経て、ここ10年以上、活動の中心を中国本土に移している。『ウィンター・ソング』『ウォーロード/男たちの誓い』など娯楽色の強い大作を手がけてきたが、興行、評価ともに芳しいものではなかった。「10年前の中国では、映画館は視覚効果を楽しむために行く場所で、大作でなければ当たらなかった。私自身、実は大作映画は好きではありません。でも、そうでなければ映画が撮れなかったのです」と中国映画市場の実情を明かす。

 近年は中国の観客の嗜好も変化し、コメディーや青春映画が好まれるようになった。監督曰く、「もともとのスタイルへ“原点回帰”しただけ」だという前作の『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ』(2013東京/沖縄・中国映画週間で上映)は、実在の英語学校の創業者の青春を描き、『ラヴソング』以来の快作とも評価されて大ヒット。「一部の香港の観客からは『金儲けのために香港を捨てた』と不満がられています」と苦笑しつつも、「中国を拠点に活動する状況は当分変わらない」とチャン監督は言う。「中国市場は第二のハリウッドになりつつあり、香港からはもちろん、韓国からも多くの人材が流れている。もちろん、いいプロジェクトがあればどこででも映画を撮りたいと思いますが、残念ながら、香港ではマフィアものやコメディーといったジャンル映画に限られます。一方、中国では日々興味深い物語が生まれ、やっと『最愛の子』のようにヒューマンなドラマも撮ることができるようになった。状況が変わったのです」。鋭く、かつ柔軟に時代の流れをとらえるピーター・チャン監督の、一つの到達点がここにある。(取材・文:新田理恵)

映画『最愛の子』は1月16日よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開


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