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ホロコースト生還者が学生に語る「耳に心地よい言葉は疑って」

ホロコースト生還者が学生に語る「耳に心地よい言葉は疑って」
ホロコースト生存者のヤーノシュさん

 ホロコースト(ナチスによるユダヤ人虐殺)を扱い、昨年のカンヌ国際映画祭グランプリほか、数々の映画賞に輝く衝撃作『サウルの息子』上映会&トークセッションが、14日、早稲田大学で開かれ、ホロコーストを生き延びたヤーノシュ・ツェグレディさんが登壇。自身の思いを学生たちに語りかけた。

 「日本に来て40年経ちました。おそらく私は、現在日本に暮らす唯一のホロコースト生存者でしょう」というヤーノシュさんは、現在78歳。1937年にハンガリー・ブタペストで生まれ、7歳の時、ゲットー(ユダヤ人の強制居住区)に身を潜めて暮らし、迫害を生き延びた。強制収容所に送られ離ればなれになった両親は奇跡的に生還したが、ほとんどの親類は虐殺されたという。戦後、ピアニストとして成功し1967年に来日。音楽大学で教鞭をとるなどし、退職後の現在も指導にあたっている。

 ホロコーストの体験について「ゲットーで暮らしたのはほんの数ヶ月でしたが、幼い私にはとてもとても長く感じられ、自分の人生を根本から変えました。今もはっきり記憶に刻まれています」と話したヤーノシュさん。「過去の苦しみにとらわれないよう、あの記憶から距離を置いて、ずっと考えないようにしてきましたし、今も語りたくありません。でも日本に来て、素晴らしい妻や家族と出会えたことも、あの体験があったからです。人生の明るい面、希望を見よう見ようと、ずっとやってきました。今日も学生さんたちがいるので、お招きを受けたんです」と会場に語りかける。

画像テキスト
登壇したイリット・サヴィオン・ヴァイダーゴルン公使(イスラエル大使館)、 ヤーノシュさん、石岡史子さん(通訳・対談、NPO法人ホロコースト教育資料センター代表)

 『サウルの息子』を観た感想を尋ねられたヤーノシュさんは「(本作は)ホロコースト全体を伝えるというよりも、極限状態に置かれた人間が何を大切に思うかという、すべての人に普遍的なメッセージがあります」と述べてから、「今も人間は、歴史から何も学んでいないように、私には思えます。みなさん、キャッチフレーズや耳に心地よい言葉を聞いたら『それは本当か?』と批判的に考え続けることをやめないでください」とメッセージを送った。

 本作は、第二次世界大戦下のアウシュビッツ強制収容所で、ガス室に送られた同胞の死体処理の仕事を強いられ、自身もやがて殺される運命にある悲劇の部隊“ゾンダーコマンド”に所属するユダヤ人の男が、ガス室で発見した息子らしき少年の遺体を、ユダヤの習慣にのっとって正しく埋葬しようと奔走するさまを描く。先日、第73回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を受賞、本年度アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた。監督は、本作が初長編作品となるハンガリーの新鋭ネメシュ・ラースロー。(取材/岸田智)

映画『サウルの息子』は1月23日より新宿シネマカリテほかにて全国公開


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