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原発事故で父が自殺…痛みを抱える福島の農家と東京の学生との交流で受け継がれたもの

原発事故で父が自殺…痛みを抱える福島の農家と東京の学生との交流で受け継がれたもの
農家・樽川和也さん

 東日本大震災と原発事故後、突然の苦境を生きることになった福島のある農家の現実に迫るドキュメンタリー映画『大地を受け継ぐ』の初日舞台あいさつが20日、ポレポレ東中野で行われ、本作出演の農家・樽川和也さんと、樽川さんのもとを訪れた東京の学生たち7人が、井上淳一監督とともに登壇。樽川さんは「間もなく事故から5年が経ちますが、私の住む地域はただ時間が流れただけで、何も変わっていません。この現実を(本作で)多くの人に見ていただきたい」と語りかけた。

 原発事故から2週間後、農作物出荷停止のファックスを受け取った福島県須賀川の農家・樽川和也さんの父・久志さんは、和也さんに「お前に農業を勧めたのは間違っていたかもしれない」と告げた後、自ら命を絶った。それから4年。父から受け継いだ土地で農業を続ける樽川さんのもとに、東京の学生11人が訪れる。語られ始める4年間の葛藤と決意。痛みを抱えた人の孤独な「声」に、井上監督が肉薄する。

画像テキスト
左から、井上監督、矢部さん、金子さん、内田さん、樽川さん、井澤さん、野月さん、樽見さん、宮田さん

 福島から東京に戻ったあとの現在の心境を聞かれた学生たち。「東京で福島のことを他人事で話す自分に違和感を感じ始めた」(矢部涼介さん)、「言葉にならない問いが心にずっとある」(金子鈴幸さん)、「普通の小さな幸せを奪われてしまった人が、私のすぐそばにいるということを忘れたくない」(井澤美采さん)など、真摯な思いを改めて樽川さんに伝えた。同じく登壇した内田夏奈子さん、樽見隼人さん、野月啓佑さん、宮田俊輝さんも「原発事故をどこか遠い場所の出来事と思っていた自分に、改めて気がついた」と口をそろえる。

 すると、井上監督は「福島で本作を先行上映したとき『東京の映画人がたびたび福島に来るが、東京に戻ったあと、どれだけの人が福島の思いを受け継いでくれるのか』と批判的な言葉ももらった。ぼくは樽川さんの言葉が、彼ら若者の中で小さな芽を出せばいいし、それしかないと思っていたが、今の(彼らの)言葉を聞いて、彼らを連れて行って本当によかったと思います」と少し目を潤ませながら話す。

 「父が命を絶ったことで、私はメディアに目を向けられてきました」と語る樽川さんは「取材は正直、受けたくないですが、国や東電に訴えたくても出来ない人が福島にたくさんいる。私はその代表と思っています」と決意を明かし、「廃炉まで30年といわれます。30年後、私は70歳。土地の解決を見ず、時間だけが過ぎるのか?」と苛立ちもにじませる。井上監督は「樽川さんの言葉の向こうにある深い沈黙こそ、撮りたいものだった」と作品の本質を明かしていた。(取材/岸田智)

映画『大地を受け継ぐ』はポレポレ東中野ほか全国で順次公開


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