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名画プレイバック

『美女と野獣』(1946年)監督:ジャン・コクトー 出演:ジャン・マレー、ジョゼット・デイ 第41回【名画プレイバック】(1/3)

『美女と野獣』(1946年)監督:ジャン・コクトー 出演:ジャン・マレー、ジョゼット・デイ 第41回
公開当時の『美女と野獣』ポスタービジュアル - (C)Lopert Pictures Corporation / Photofest / ゲッティイメージズ

 詩人としてだけでなく、小説家、劇作家、評論家、画家、映画監督など多彩な顔を持ち、各界の著名なアーティストとの交友関係も広かったジャン・コクトー。各分野で既存の価値観に縛られることなく、自由に自らの芸術、表現方法を模索し追求し続けた人物でもあった。想像力を刺激しまくる『美女と野獣』(1946)は、まさにそのことを実感させられる幻想譚の傑作である。(文・今祥枝)

 美しく気立ての良い娘ベル(ジョゼット・デイ)は、口やかましい姉アデレードとフェリシエに召使いのようにこき使われているが文句も言わず、家事をこなす日々。ある日、商人の父(マルセル・アンドレ)の船が海に沈み、破産の危機に陥る。まもなく一隻が入港したという知らせを聞き父は港へ旅立つが、債権者に船を押収され全てが徒労に終わった帰り道、夜の森で不思議な古城に迷い込む。城を出る際に、庭の美しい一輪のバラを手折ると野獣(ジャン・マレー)が姿を現わし、命の代償として娘の一人を差し出すよう命じる。迷わず志願し城へ向かったベルは、野獣の姿に最初は驚くが、次第にその優しさに心を開いていく。だが、父の病を知り一週間の約束で家に帰ると、彼女に求愛するアヴナン(ジャン・マレー)と着飾ったベルに嫉妬する姉妹らは結託してベルを城へ帰さず、城にある宝を奪おうとする……。

 広く世に知られているこの物語で、現在最もよく知られているバージョンは1991年のディズニーアニメーション『美女と野獣』だろうか。そもそもは1740年にヴィルヌーヴ夫人によって書かれたものを短縮した、1756年に出版されたルプランス・ド・ボーモン版が現在のスタンダードとなっている。グリム童話の中にも類似作があるが、コクトー版はボーモン版を原作とし、一般的に私たちが知る物語と大筋は同じだ。

 映画はコクトー自身による言葉から始まる。「子供たちは大人の話を素直に信じ込みます 一輪のバラの花から始まる不思議な不思議な物語です(中略)みなさんも ちょっぴり子供に帰ってみませんか」。さらに、「それでは例の呪文を! “開けゴマ”昔々あるところに……」と続いて映画は幕を開けるのだが、コクトーの言葉はまさに観客に魔法をかける呪文のよう。一気に引き込まれる幻想的な世界は、まるで1ページずつ本をめくるかのような、あるいは物語を読み聞かせてもらっているような感覚を覚えるものだ。

 とはいえ、本作は極端にセリフが少ない点が特徴でもある。数多くのフランス映画の名作に、『ローマの休日』(1953)や『ベルリン・天使の詩』(1987)などを手がけた、アンリ・アルカンによるモノクロームの映像の素晴らしさ。『ローマの休日』や『悲しみよこんにちは』(1958)などを手がけた作曲家ジョルジュ・オーリックによる、ロマンチックで幽玄な音楽。とりわけフランスのファッションデザイナー、ピエール・カルダン(ノークレジット)による衣装は、たっぷりとしたボリューム感がありながらエアリーで、ベルが何層にも薄い布が重なったドレスをふわりと纏いながら(すーっとすべるように)城の廊下を歩くシーンなどは、この世のものとは思えない美しさ。同時に、風の音や揺れる木々のざわめき、水の音、陽の光、ろうそくの灯りが揺れ濃淡も細やかにゆらめく影が、ベルと野獣の微妙な関係性の変化、感情の機微を雄弁に物語っている。セリフは少なくとも、映像は実に饒舌なのだ。


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