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ホロコースト戦犯アイヒマンの無表情さ…“世紀の裁判”映像は今も私たちに問いかける(1/2)

ホロコースト戦犯アイヒマンの無表情さ…“世紀の裁判”映像は今も私たちに問いかける
無表情なアイヒマン… - 映画『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』より - (C) Feelgood Films 2014 Ltd.

 ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)に深く関与した元ナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンを裁いた“世紀の裁判”を、世界にテレビ放送するという史上初のプロジェクトを実現させたテレビマンたちの実話を描く映画『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』の公開記念トークショーが8日、下北沢の本屋B&Bで行われ、野中章弘氏(ジャーナリスト)、石田勇治氏(東京大学大学院教授)、村山匡一郎氏(映画評論家)の3人が出席。本作を観るための歴史背景を確認しつつ、歴史を変えた映像の力について、語り合った。

 実在のテレビプロデューサー、ミルトン・フルックマンと、撮影監督のレオ・フルヴィッツが、1961年4月から4か月にわたり撮影した“世紀の裁判”の映像は、アメリカ3大ネットワーク他、世界37か国でテレビ放映され、ドイツでは人口の80%が放映を観たといわれる。

画像テキスト
(左から)村山氏、石田氏、野中氏

 映像史に詳しい村山氏は「この映像がビデオで撮られた」という点に注目して「映像をどう記録するかという問題意識から、ビデオが発明されたわけですが、それがちょうどこの時期と重なった。コスト高で記録時間も短いフィルムからビデオに変わり、アイヒマンの表情を延々撮り続けることも可能になり、映像を記録として残すという発想も生まれた」と指摘。するとドイツ現代史が専門の石田氏も「世界がホロコーストを認識する上で、この映像の果たした役割はとても大きかった」と応じた。

 石田氏は「今でこそホロコーストの知識を、我々は持っていますが、1961年の時点では、ナチ時代に何が行われたか、多くの人は半信半疑で、ユダヤ人が被害者として口を開くこともできなかった。このテレビ放送があって、状況は根本的に変わった」と話した後、「さらに、撮影のフルヴィッツという人は、アイヒマンの表情を執拗に追いかけ、撮る側の意志も感じます」と記録映像を超えた撮影者の熱意に共感を示す。

 ドキュメンタリーも手がける野中氏は「カメラは証言台の証言者を追うのが普通ですが、フルヴィッツは証言を聞くアイヒマンの表情を撮れと言う。まったく無表情で感情を表に出さないアイヒマンの一瞬の変化も見逃すなと言うわけです。その緊迫感。これこそ言葉では表せない映像の力ですね」と続けた。石田氏は最後に「アイヒマンの無表情を観る私たちは、この映画でホロコーストの核心部分に連れて行かれる。ドイツの哲学者ハンナ・アーレントが、この裁判の傍聴記で語った『悪の凡庸さ』という言葉は、日本でも有名です。でもアイヒマンは(アーレントの言うように)本当に組織の歯車として、何も考えず命令に従っただけの人物なのか。最新研究も踏まえて、アーレントの見方を相対化する視点も、本作には含まれていると思いました」と本作の骨太の仕上がりを称えていた。


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