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勢い止まらない2.5次元、実写化との違いは?ヒットのワケを探る

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代々木アニメーション学院・2.5次元演劇科の体験入学会で学生の前で芝居を披露する俳優の佐々木喜英
代々木アニメーション学院・2.5次元演劇科の体験入学会で学生の前で芝居を披露する俳優の佐々木喜英

 漫画やアニメなどの題材を舞台化した“2.5次元”作品の勢いが止まらない。代表的なミュージカル「テニスの王子様」は、城田優斎藤工といった人気俳優を輩出しているが、数年前までは、一部の熱狂的なファンに支えられていた2.5次元。それがヒットを重ね、広がり続ける要因は何なのか。銀河劇場も手掛ける代々木アニメーション学院・取締役の伊藤太郎は、“ライブ感”と“とっつきやすさ”にあると語る。

【写真】キャストはどう思ってる?2.5次元で活躍する俳優たち

 近年、人気漫画が次々と実写化されている。しかし、それと2.5次元作品は全く異質なものだという。伊藤が「ドラマや映画の場合、実写化にあたり必ず改編が入る。これはもう2.5次元の定義からはずれる」と説明するように、2.5次元と呼ばれるのは、原作に忠実なものだけ。「2.5次元演劇としては、徹底的に“似せる”。例えば漫画原作なら、台本はセリフを含め原作から一切はみ出すことも減らすこともしてはいけない。原作から外れた瞬間に2.5次元という言葉は使ってはいけないんです」。

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 唯一、役者と演出家の裁量が入るのがキャラクターの解釈だ。基本的にはすべて演出家の指示でキャラたちが2次元から2.5次元に生み出されていく。オリジナル作品では、俳優の役へのアプローチは、台本、脚本からイメージをふくらませ、作っていく作業に近い。だが、「2.5次元演劇にはベースの役がある。ここにいかに寄せていけるか、これは他での演技とは似て非なるもの」と伊藤は断言。役に入り込み、すでに提示されているキャラクター像にどこまで近づけるか、というのが役者に求められる資質の一つにもなる。

 2.5次元作品の市場はいまや100億円以上、作品数は2000年以来ほぼ右肩上がりに増加し、2015年には年間上演数が100作品を超えている。このヒットの要因を伊藤は“ライブ感”にあると話す。「一つの作品をゲネプロから初日、千秋楽と観ていると、その間にゲネが80%とし、初日で100%に持って行っている。でも千秋楽になるとなぜか120%になるんです。さらに、セリフの一言や動作の一つにちょっとした変化がある。そこが観客を惹きつけるのではないか」と分析。

 伊藤はまた、“とっつきやすさ”も2.5次元演劇の魅力と語る。「ストレートプレイは文化としてすばらしいもの。誰が見ても高尚だが、だからこそとっつきにくいイメージがあった。それが2.5となると誰もが知っている原作、ムーブメントを起こしうるだけの、とっつきやすさ。そして役者たちが真剣に稽古をして作り上げていく。そこに観客は感動と興奮を覚えてくれているのでは」。一方、所謂“会いに行けるアイドル”要素も否定できない。公演後のイベントなどを通じて俳優たちと交流できる距離感もファンに受けている理由かもしれないと伊藤は明かす。

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 代々木アニメーション学院は来春、2.5次元演劇科を新設する。伊藤は、その根底にあるのは「入ってきた子たちを役者の“入口”に立たせてあげたい」という思いであり、“2.5次元専門の俳優”を育成することが目的ではないという。「いまは2.5次元というものがこれだけ認知されている。だから、そこが入口でもいいのではと考えたんです。とっつきやすく、自分が興味を抱くものであれば、好きこそ物の上手なれではないですが、そこを皮切りとして他の役もできるようになっていくのではと考えました」。

 そんな2.5次元演劇科は、ミュージカル「テニスの王子様」を手掛け2.5次元ブームの仕掛け人とされる松田誠が代表を務めるネルケプランニング、マーベラス(舞台「弱虫ペダル」、舞台「刀剣乱舞」ほか)、ぴえろ(アニメ「おそ松さん」、舞台「おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME~」ほか)の大手制作会社3社との強力タッグでカリキュラムが組まれる。さらなる強みは代アニが銀河劇場を所持していること。学生をアンサンブルとして銀河劇場の舞台に立たせることを想定しているが、「学芸会の発表の場にはしたくない」と伊藤は熱を込める。十分な実力が備わった学生に限り、銀河劇場で上演されるネルケ制作などの舞台に実際に立たせることを一つの出口のかたちにしたいとしている。

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 「NARUTO-ナルト-」「BLEACH」「弱虫ペダル」、最近では「刀剣乱舞」と人気作が続々と舞台化されていく。それ故に、新たに2.5次元の題材となる原作は枯渇しているといい、「原作を作っていく時代になっている」と伊藤は話す。「“どこまでできるか”というのを始めから考えて作るんです。ライトノベルから始まるものもあればソーシャルゲーム、アニメという場合もある。リレーさせていくことが大事。そして舞台化というのを流れにしているんです」と制作目線から実情を語った。

 一方で、男性客を今後どれだけ増やしていけるかという課題もある。伊藤によれば、現在の2.5次元作品の観客の8割が女性。「男性をターゲットとしたコンテンツを取り入れていけるか。それがこの業界全体の課題」だという。しかし、2.5次元ジャンルの未来については前向きだ。伊藤は、「2.5次元演劇というのが“オタク”や“腐女子”というイメージで、恥ずかしいもののように捉えられていた時代があった。それがどんどん大きなコンテンツとして広がっていく中で、僕はこの分野が少なくとも2020年の東京オリンピックまでは加速度を増していくと思っています。いまも海外公演を行っていますが、外国の方に認知されアジアを中心に世界に広がっていく可能性がある。世界に通用するものに育っていくと思っています」と2.5次元演劇の大きな可能性に期待を寄せた。(編集部・小山美咲)

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