ADVERTISEMENT
どなたでもご覧になれます

君が生きた証 (2014):映画短評

君が生きた証 (2014)

2015年2月21日公開 105分

君が生きた証
(C) 2014 Rudderless Productions LLC. All Rights Reserved.

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

ミルクマン斉藤

実に苦く、辛い。しかし音楽の喜びに溢れ、面白い!

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

コロンバインを思わせる大学乱射事件で息子を失い、人生を捨てた (といってもエリート時代に買ったヨットに住んでる)父が、息子の遺した曲を自分で歌いはじめる。もともと若者の思いが歌に籠められたものだからオヤジの曲とは思えぬほど共感性が高く、一人ひとり若いミュージシャンが加わって…。楽曲の完成度といい、バンド成立過程のディテイルといいリアルで丁寧。楽器屋のオヤジ(L.フィッシュバーン)もいい味だが……まさかこんな展開が待っているとは! そうなるとまた別のテーマが立ち現われてくるわけで(例えば「芸術」あるいは「表現物」VSモラルの問題)、実にトリッキーかつ多様性を含み持った会心の初監督作なのである。

この短評にはネタバレを含んでいます
轟 夕起夫

絵画でいえばトリックアート的な趣向(褒め言葉)

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 息子が遺した数々の楽曲と相対し、無謀にもギター1本でそれを唄い継ごうとしている父親……のシンプルなストーリーかと思いきや、絵画でいえばトリックアート的な趣向が施されており、エンディングを迎えるともう一回冒頭から観たくなる。不意の“映画の告白”は、痛く、苦く、「彼は一体これまで、どんな心境で唄っていたのだろうか」と黙考させる。初監督のウィリアム・H・メイシー、やりおりますな~。オリジナルでつくられた曲と、ひとつひとつに命を与えたB・クラダップ、A・イェルチン、ナイスパフォーマンス! “下地”がしっかりしているので、「核心の部分」が平面から立ち上がってくるように見えるのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

「きれいはきたない、きたないはきれい」の真実

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ズンと来る秀作。銃乱射事件で亡くなった息子が密かに遺していた曲を、B・クラダップ演じる父親が歌う。音楽を通して魂の交流を果たす「父子物」……としても感動的なのだが、本作はさらに深い層に潜ってみせる。

中盤に用意された意外な事実――中々巧妙な語りの仕掛けにより、ロック・ミュージックという格好のジャンルを通した「表現論」へと錘を垂らすのだ。

最近はコンプライアンスやPC(政治的正しさ)が表現の世界でも叫ばれるが、それはアートの本質とは別物。ロックファンは優れた表現の源泉が往々にして心の闇や、病んだ魂である事を知っている。名優ウィリアム・H・メイシーによる洞察力と寛容さを備えた見事な監督作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

音を奏でる喜びがスクリーンから溢れ出る

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

静かな再生の物語。人生の半ばを過ぎて予期しなかった深い傷を受け、生きる気力を失ったときに、人はどのようにして再び立ち上がることが出来るのか。この映画は、それを音楽に象徴させて描く。

主人公は、死んだ息子が残した音楽を、自分で演奏することによって、他の人間に出会う。ギターの弾き語りが、奏者が2人になってハーモニーが生まれ、ドラムが入って、ベースが加わり、そのたびに、音楽が少しずつ豊かになっていく。演奏する喜びが少しずつ大きくなっていく。スクリーンが、その豊かさと喜びを充分に映し出す。主人公にはその後も苦難が降りかかるが、この体験によって、彼は歩き続けることができるようになる。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT