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日本の悲劇 (2012):映画短評

日本の悲劇 (2012)

2013年8月31日公開 101分

日本の悲劇
(C) 2012 MONKEY TOWN PRODUCTION
なかざわひでゆき

“静と動”のぶつかり合いを演じる仲代達矢と北村一輝が圧巻

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

とある平凡な中流家庭の崩壊を通じて、貧困や年金、東日本大震災など現代の日本が直面する様々な社会問題を浮き彫りにする。主人公は余命幾ばくもない年老いた父親と社会復帰に挫折した引きこもりの息子。様々な不幸に見舞われた挙句、外の世界から隔絶してしまった彼らの苦悩と葛藤を、まるで舞台劇のように描いていく。実際に起きた年金不正受給事件をモデルにした作品。それだけに、重苦しい閉塞感に包まれた、しかし日本のどこかで今まさに起きているかもしれないというリアリズムを伴った問題作だ。

最大の見ものは仲代達矢と北村一輝による渾身の演技対決。不器用で寡黙な父親の苦渋の決断を無言の悲哀を滲ませながら演じる仲代に対し、そんな父親の行動に激しく抵抗する息子の剥き出しの感情を演じきる北村。この2人の“静と動”のぶつかり合いはまさに圧巻であり衝撃である。

父親の選んだ最終手段がなぜそれだったのか、息子を立ち直らせるためならもっと違った人生の指し示し方があるのではないか、という疑問は確かに残る。その点も含め、我々が今の日本社会とどう向き合っていかねばならないのかを考えさせる作品といえよう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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