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オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 (2013):映画短評

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 (2013)

2015年6月27日公開 86分

オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
(C) 2013 LOCKE DISTRIBUTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

ミルクマン斉藤

いわゆる「サスペンス」じゃまったくないからね!

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

サスペンスフルな邦題に惹かれると拍子抜けになるからとりあえず要注意。原題はT.ハーディ演じる主人公の役名そのまま、高速道をひたすら急ぐ彼のひとり芝居(携帯電話の相手はいるが)というシンプルさ。まあ、その役柄が、政府施設の建設を監督する土木業者なもので、徐々に物語の全体像が明らかになってくる以前に、何かテロでも絡んでるのかと要らぬ想像をしてしまうわけだ。重ねて言うが、邦題は忘れよう。これはただの「ちょっといい話(?)」である。だがこの予想外の展開は監督S.ナイトが書いた『堕天使のパスポート』『ハミングバード』にもいえること。むしろこのシンプルさで86分保たせる夜の映像美と演出力をこそ認めよう。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

ただの実験に終わらない究極のワンシチュエーション映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 画面に映るのは車を運転するトム・ハーディのみ。物語は完全リアルタイムで進行し、状況や設定は全て電話の会話を通して詳らかにされる。まさに究極のワンシチュエーション映画だ。
 明朝に控えた重要な仕事の準備も、家族との約束も投げ出し、夜の高速道路をロンドンへ向けて疾走する主人公。電話の向こうの妻や息子、上司や同僚とのやり取り、やがて明かされるロンドン行きの理由から、平凡で真面目な男の複雑な心情や人生が浮かび上がっていく。
 ポール・ウォーカー主演の『逃走車』でも似た試みはされたが、本作ほど厳密に徹底はされていない。実験性の高い野心作であると同時に、商業映画としても成立している点は賞賛に値する。

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山縣みどり

トム・ハーディーの緊張感あふれる熱演に参った!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

トム・ハーディー演じる主人公ロックが車でハイウェイを疾走しながら、人生と対峙する姿を映す。密室劇や一人芝居、物語の進行とランニングタイムのシンクロは珍しくもないけれど、ロックとさまざまな人々との会話&自問自答で物語を成立させ、なおかつ彼の人となりを描き出す脚本がまず革新的だ。そしてハーディーの緊張感あふれる演技が見事だ。パニック寸前の状況に冷静沈着に対応せざるをえないストレスや変化する精神状態を声や話し方で表現するのだが、聞き惚れるとはこのこと? そして画面には登場しない妻や部下を演じるのも注目のルース・ウィルソンやアンドリュー・スコットなわけで、実は隠れゴージャスな作品だ。

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平沢 薫

極端にシンプルな86分で、ある男の生きざまを描き出す

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 構成は極端にシンプルだ。男が夜のハイウェイで自動車を運転しながら、数人と電話で話す。場面はそれだけ。なのに、ドラマはスリリングで奥行きがある。主人公がどんな人生を送ってきて、どんな信念を持っているのかが分かる。監督は、「イースタン・プロミス」などの脚本家スティーヴン・ナイト。会話だけで物語を紡ぐ妙技は脚本家出身のこの監督らしいが、注目すべきなのは、映像の豊かさだろう。映画の構造上、観客は電話の会話から画面に映っていないものを想像しながら映画を見ることになるのだが、にも関わらず、スクリーン上の映像の美しさに目を奪われる。夜のハイウェイを映し出すだけの映像が、さまざまな表情を見せるのだ。

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相馬 学

マックスよりマッドかもしれないトム・ハーディを見よ

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 タイトルに反して誰よりもまともに見えた『マッドマックス/怒りのデス・ロード』のマックスことトム・ハーディだが、ここでは同作以上に延々車を飛ばし、マッド寸前の神経衰弱を見せているのだから面白い。

 86分のほとんどは車を走らせる主人公の姿をとらえ、さまざまな人々との電話での会話によって彼が置かれた立場が見えてくる。その度に緊張感が高まっていくのは、主人公の心理がジワジワと丁寧にあぶり出されているから。根気に根差した演出がお見事。

 よき人・よき家庭人・よき仕事人であろうとして破たんするさまを見つめた心理スリラー。ほぼ独り芝居のハーディの頑張りともども必見!

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森 直人

こちらの“動かない”トム・ハーディも素晴らしい!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

「積み上げてきたものが一気に崩れる」(©ゲッターズ飯田)天中殺状態の男――いや、笑いごとではない。86分、乗用車の運転席だけで人生の残酷な皮肉を描き切る。

リアルタイム進行のシチュエーション物としての抜群の精度にびっくり。まるでラリー・コーエンのような本作が、スティーヴン・ナイトの監督作ってことにさらに驚き。『堕天使のパスポート』(脚本のみ)から『ハミングバード』まで「移民」など特徴的なカードを貼りつけてきた彼が超ソリッドな作劇に徹して、いきなり極めた。

感情をセルフコントロールして適切な対処を試みようとするT・ハーディ。ベタに言えば『マッドマックス』の「動」に対し、こちらは「静」の傑作!

この短評にはネタバレを含んでいます
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