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甘い鞭 (2013):映画短評

甘い鞭 (2013)

2013年9月21日公開 118分

甘い鞭
(C) 2013『甘い鞭』製作委員会
相馬 学

エロを超えた情念の深みに唸るホラー的力作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 壇蜜の主演となればエロティシズムは必須で、その点での観客の期待が裏切られることはない。しかし、この映画は同時に女性の情念を描くことに長けた石井隆の監督作でもあり、肝はより深いところにある。

 監禁・暴行された続けた高校時代のヒロインの忌まわしい記憶と、10数年を経てSM嬢となった現在の姿が交錯する物語。過去のトラウマが現在の快楽の追及に至るだけなら、よくある官能映画で終わるところだが、ヒロインの精神的な追求にフォーカスしているのが本作のミソ。高校時代のあの時に失った何か――イノセンスであり、はっきり言えば母親から得られるはずだった愛情――を考えながら見ると、シュールなラスト・シーンが味わい深いものとなるに違いない。この豊潤さこそが石井ワールドの真骨頂。壇蜜が発するエロティシズムは確かに印象に残るが、それ以上に石井演出に応えた女優としての力量を評価したい。

 タッチはホラー風で、異様なテンションが目を釘付けにする。この辺は原作へのリスペクトと言えるだろう。ヒロインの高校時代を演じた間宮夕貴の、壇蜜に引けを取らない熱演もインパクト大。

この短評にはネタバレを含んでいます
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