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スティーブ・ジョブズ (2013):映画短評

スティーブ・ジョブズ (2013)

2013年11月1日公開 128分

スティーブ・ジョブズ
(C) 2013 The Jobs Film,LLC.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 2.8

清水 節

愚かであれ!とは、底の浅い伝記映画を作れという意味じゃない!

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 スタンフォード大で2005年にジョブズが行った有名なスピーチの言葉を借りて批評しよう。
 
 人生における「点と点」を有機的につなげられず、事実を誇張した年表のようだ。しかも『ソーシャル・ネットワーク』を表層的になぞるかのように欠点を強調するあまり、共感を呼ぶことがない。それに「愛と敗北」の描写が浅薄だ。天は二物を与えず、世界を変革する発明に長けた反面、経営的才覚に欠けた彼は、自分の会社から放てきされ、復帰してから本領を発揮した。しかし周囲に支えられ人間的成長を遂げる姿はなく、これではリベンジに執念を燃やしただけの男だ。さらに、若くして「死」の影が迫ってからの切迫感、人生観の変化を捨象してしまった。何より、彼が抱いた高邁なビジョンが欠落している。
 
 ジョブズならきっとこう言うね。「本作を観るくらいなら、砂糖水でも飲んでいたほうがましだ。ただのクソ野郎にしか見えないじゃないか。ハングリーであれ愚かであれ!とは言ったが、空腹なら大急ぎで底の浅い伝記映画を作れという意味じゃない。さあ、作り直せ!」。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

作り手の愛が感じられない、おざなりの伝記映画

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ダイアナ』のナオミ・ワッツ同様、アシュトン・カッチャーの完コピっぷりは評価に値する。だが、こんな旬な題材をなぜ、あまり実績のないB級監督が撮ってしまったのか? しかも、脚本家も本作がデビュー作であり、力量のなさは露骨だ。
 このタイトルながら、中盤からは社内の権力闘争を軸に描かれる。つまり、作り手が天才で変人であるジョブズに愛情はもちろん、興味すらないように感じられるのだ。しかも、ピクサー設立やビル・ゲイツとの駆け引きなど、観客として観たかったエピソードが描かれないことから、かなりおざなりの伝記映画に…。
 よって同じ完璧主義者のマーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャル・ネットワーク』はもちろん、フィクション色が強かったTVムービー『バトル・オブ・シリコンバレー』にも遠く及ばない。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

“腹立たしい男”の強烈な熱意を伝えきれたか?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 やりたいことのためなら友達を裏切り、部下にも無理を強いる。ぶっちゃけイヤなヤツではあるが、一方でその熱意もわからないではない。ジョブズのそんな複雑な人間像の一端が垣間見えるという点で、とても興味深く観た。バイオ・ピックでは題材がエキセントリックであるほど面白くなることを再認識させられる。

 しかし、ドラマとして一貫性があるのかは疑問。“はみ出し者こそが歴史を作る”という結末で語られるテーマと、それまで見せられてきたエピソードが一体となっているとは言い難く、寄り道の多さに歯がゆさが残る。本作で描かれる時期は1974年の大学中退期からアップル退社と復帰、2001年のiPod発表時までだが、テーマを的確に伝えるならば、時期をピンポイントに絞るべきだった。

 アシュトン・カッチャーは評判通りジョブズの特徴をよくつかんでいるし、ジョブズの周囲のキャラクターも魅力がある。それだけに、焦点を絞れないままエピソードを積み重ねてしまったのが惜しまれる。

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中山 治美

IBM愛用者でしたけど、何か!?

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 最初に断っておくが、筆者はMac信者でもジョブズ信者でもない。長年Think Padを愛用し、むしろジョブズが喧嘩を売ったIBM派。だから、尚更分からないのだ。劇中、何度かジョブズによる新商品発表シーンが登場するのだが、一体、何で聴衆が盛り上がっているのかが。アップル社の協力を得られなかった本作には商品も出てこなければ、それがどれだけ革新的な技術が搭載されているのかの説明はろくにナシ。結局、“テクノロジーの天才“の部分は、分からずじまいだった。
 むしろ印象に残ったのは、処世術の上手さと才能ある人物を巧みに利用してきたずる賢さ。それでもそこに、『ソーシャル・ネットワーク』のような孤高の人間が味わう孤独や哀しみが見えるシーンが少しでもあれば共感出来たのかもしれないが。ジョブズにさしたる興味はなくとも、なぜ多くの信者を生んだのかを探りたかった者にとっては消化不良。そもそも革命児を描く映画なのに、アシュトンを筆頭にダーモット・マローニー、ルーカス・ハース、マシュー・モディーンとお久しぶりスターがてんこ盛り。見た目重視、新しい事が好きだったジョブズ精神に反してないかい?

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

王道の「青春の光と影」

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

これも『ダイアナ』と同じく、伝説的な人物を等身大サイズで解釈する作劇ゆえ「スティーブ・ジョブズ映画」としては賛否を呼ぶだろう。あと単純に、ピクサーのことが描かれていないのは映画ファンとして寂しい気がする。

それでも筆者は本作を非常に楽しんだ。特にキャット・スティーヴンスやアニマルズの曲が流れ、大学でヒッピーの聖典だったラム・ダスのスピリチュアル本『ビー・ヒア・ナウ』の話題が出たりする‘70年代のパートは最高! またジョブズが仲間たちと自宅の小さなガレージで会社を始めた時(のちのアップルCEOに「ミニ・マンソン・ファミリーだな」と苦笑される)、「起業もの」って「バンドもの」に構造が似ているなと思った。あるいは同時期の米西海岸を舞台にスケボーチーム“Z-BOYS”の光と影を描く『ロード・オブ・ドッグタウン』のインドア系頭脳集団版でもある。

『ソーシャル・ネットワーク』のような先鋭性はないが、この「大衆映画」的なオーソドキシーは決して悪くない。ちなみに全くの余談――ジョブズの伝記ってヤマザキマリのマンガ版だけでなく、集英社の児童向け学習まんがも刊行されているのはご存じでしょうか?(笑)。

この短評にはネタバレを含んでいます
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