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ばしゃ馬さんとビッグマウス (2013):映画短評

ばしゃ馬さんとビッグマウス (2013)

2013年11月2日公開 119分

ばしゃ馬さんとビッグマウス
(C) 2013「ばしゃ馬さんとビッグマウス」製作委員会

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 5

くれい響

奇才監督とジャニーズが起こした化学反応

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

「もし、家庭教師の教え子が可愛かったら?」「もし、モテるために喫茶店を開いたら?」など、男なら考えがちな“もしも”を、魅力的なヒロインを配して映像化してきた吉田恵輔監督。3年ぶりの新作は、実体験に基づく「もし、長年の夢を諦めるなら?」というヘビィなテーマをぶつけてくる。
 対照的な性格の男女を通し、ときにコミカルに、残酷に、夢との向き合い方を描くのだが、セリフ回しや構成など、卓越したテクがハンパない。当て書きで書かれた麻生久美子は、それに応えるべく、体当たりでヒロインを演じ、誰もが認める代表作を生んだ。だが、シナリオ教室や居酒屋など、ミニマムな舞台ながら、ここまでマスな作品となったのは、安田章大の功績にほかならない。麻生のヒロインが監督の分身であることで、彼はこれまでの吉田作品のヒロインが持っていた動物的感性でキラキラパワー((C)小野恵令奈)を放つのだ。AKB48に続き、ジャニタレと起こした化学反応は吉田恵輔のネクストステージを告げる一作になった。eighterや安田担(当)はもちろん、クリエイターのほか、夢を持つすべての人の胸を貫く2013年日本映画ベストワンである。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

「抱いちゃった夢」の続け方・終わらせ方

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

「僕は吉田恵輔監督の映画が大好きなんだよね。女の子が持ってる天然の悪いところを魅力的に撮るじゃん」とは漫画家・江口寿史の弁(『ビジョメガネ5』ソニー・マガジンズ刊より)。その記事で『純喫茶磯辺』に触れ、「すぐどうでもいい男とヤッちゃうバカ女の役(笑)」で絶賛されていたのが麻生久美子。今回の新作では一転、マジメに脚本家を目指しながら、夢の底辺で空回りしている34歳の「ばしゃ馬さん」を同様の生々しいリアリティで演じる。

彼女と対になるのが、何も書いていないくせに自称・天才と豪語する「ビッグマウス」。この絶妙にウザいダメ男を関ジャニ∞の安田章大が怪演。シナリオスクールを舞台にした“あるある系”の体裁を取りながら、「才能」と「努力」をめぐる痛切な自己実現の物語に仕上げ、必ず心の奥深くに刺さってくる。

鈴木おさむの人気作『芸人交換日記』を連想する人もいるだろう。だが、こちらはサバイバルの光と影を描くのではなく、ひたすら人間の弱さや苦悩に共感を持って寄り添う。真に目線が低いのだ。『なま夏』から『さんかく』まで、イタい恋愛劇を極めた吉田監督が優しさと色気を保ちつつ芸風を広げた傑作!

この短評にはネタバレを含んでいます
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