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溺れるナイフ (2016):映画短評

溺れるナイフ (2016)

2016年11月5日公開 111分

溺れるナイフ
(C) ジョージ朝倉/講談社 (C) 2016「溺れるナイフ」製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

なかざわひでゆき

真っ直ぐで激しい10代の恋は、恐れを知らぬゆえに脆く儚い

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 東京から転校してきた人気モデルの美少女と地元名家の跡取り息子の恋愛を軸に、地域や家族に縛られた田舎の若者ならではの閉塞感、感受性の鋭い10代だからこそのがむしゃらな魂の叫びが描かれる。
 突っ走るような少年と少女の激情。そこには恐れも迷いも疑いもなく、まるで世界は2人のためにあるかのようだ。しかし己の無力を思い知らされ、つかの間の夢から醒めたとき、彼らの前には人生の厳しい現実が立ちはだかる。
 神話的でありながら痛々しいほどリアル。甘ったるい青春恋愛映画とは一線を画す野心作だが、それだけにダメ押し的な2度目の“事件”は不要だったようにも思う。あの瞬間、どうしても作為性を意識してしまうのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

メリハリって、大事

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

俳優に頭で考えて芝居させるのではなく、
本能から表現させる手法として、走らせたり叫ばせたり、肉体を使うのは演出の常套手段。
そこにロケの力も加わって、
ここのところ出過ぎな感のある菅田将暉と小松菜奈から青春の輝きと疾走感を出すことは成功している。
ただ、終始2人を動かし過ぎ。
そこに音楽も加わって、駆け足で物語が進んでしまった印象だ。
思春期の危うさやもどかしさなど、じっくり見たいシーンはいくつもあったのだが。
本作の山戸結希を含め、邦画は自主からメジャーに躍進する監督が相次ぐ。
喜ばしく思う一方で、もう少しじっくり製作する環境は作れないものかと、考える日々である。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

16年の日本映画を語るうえでハズせない!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

“新世代ファンタジスタ”の異名を持つ山戸結希監督のメジャー進出作だが、その仕上がりは期待通り! いろいろと問題ある原作の持つ勢いや危うさと、山戸監督との作風のシンクロ率がハンパないのだ。一方で、少女マンガならではのキラキラ感を放つ小松菜奈と、キャラと同じく神々しさを放つ菅田将暉が、『ディストラクション・ベイビーズ』で不発に終わった化学反応を眩しいほどに炸裂させる。さらに、中盤パートから恐るべき追い上げを魅せる重岡大毅の存在感。男女問わず、彼に惚れない奴はいないといえるほど魅力的である。どこか懐かしくて、新しいやまとんワールドは、強豪揃いだった16年の日本映画を語るうえで、間違いなくハズせない!

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

十五歳、海へ――ティーン映画としての中上健次ガールズVer.

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

山戸結希の映画をインディから観続けている者なら、まるで『おとぎ話みたい』のリメイクだ!と思うのではないか。地方と東京の距離を軸に、少女の激烈な恋と自己実現が交錯する。それをティーン映画という商業ジャンルで貫いた。「メジャーデビュー」としては完璧だ。

ロケが和歌山南部の新宮/熊野なのは、原作者・ジョージ朝倉の意図からのスライドだが、中上健次の土着神話性(ただし方言は原作に倣って広島弁に近い)と少女漫画の抽象性が映画的に昇華されたのは画期だろう。これは共同脚本・井土紀州と山戸の個性の融合とも言えるか。『火まつり』『ディストラクション・ベイビーズ』と並べた時、確かにコレが最も「進化形」だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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