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エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に (2016):映画短評

エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に (2016)

2016年11月5日公開 117分

エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に
(C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

相馬 学

賞味期限付きの“自由”を生き生きと描いた快作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 『6才のボクが大人になるまで。』の延長線上にあるドラマ語というよりは、ちょっとだけ上品な『アニマル・ハウス』といった方がピッタリくる(コレはコレで十分、下品なのだが……)。

 寮生活の始まりの3日間をとおして、大学生活でしか味わえない“自由”をスケッチ。酒飲みとナンパと大騒ぎに、友情と恋も入って見ていて楽しくなるが、この自由に“期限”があることをきちんと視野に入れているリンクレイター監督のまなざしが妙味で、少し切なくもある。

 名門野球部という設定なのに、キャラひとりひとりが、まったく名門校の生徒らしくない点も面白い。アメリカの体育会系、自由過ぎ!

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

リンクレイター監督しか描けない音楽体験

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『6才のボクが、大人になるまで。』否定派として、本作のように3日間という限定した時間でドラマを描くのが、リンクレイター映画の真骨頂だと思う。主要キャラの4割近くが、ハリー・リームスばりの“ポルノヒゲ”をたくわえ、永遠にムダ話にバカ話を繰り広げる。そこに“大学生&寮生あるある”をブッ込んでいながら、どこか哲学的。しかも、ディスコでフィーバー後、ホンキートークでラインダンス、さらにはパンクのライヴでモッシュ初体験と、ジャンルを超えた音楽体験をサラリと描くなんて離れ業もやってのけてしまう。ヒロイン演じるリー・トンプソンの愛娘ゾーイ・ドゥイッチの描き方も含め、やはり肩の力が抜けた感が心地良い!

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

サントラの選曲センスは最高!

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 1980年夏のテキサスを舞台に、新学期を目前に控えた大学野球部員たちの3日間を描く。リンクレイター自身の『バッド・チューニング』を彷彿とさせる青春映画だ。
 とくに明確なプロットはなし。まるでタイムカプセルのように、あの時代のあの瞬間を切り取って見せる作風は、まさしく『バッド・チューニング』そのものである。
 ただ、肝心のキャラクターの魅力が全体的に薄く、途中で誰が誰だか分からなくなることも。まだまだ70’sを引きずっていた時代の緻密で正確な再現、リアルタイム世代でなけりゃ不可能なサントラの絶妙な選曲は最高に胸キュンなんだけどね。ベル・エポックの「ミス・ブロードウェイ」まで選ぶセンスに脱帽。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

これは「リンクレイター節」のひとつの完成形かもしれない。

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

鑑賞直後よりじわじわと自分の中で評価が上がっている。大枠は『バッド・チューニング』の続き、リンクレイター版『アメリカン・グラフィティ』第2弾だが、『ビフォア』シリーズや『6才~』で試みた「時間」の実験がシンプルに洗練された語り口へと結実。普通ならノスタルジックな回顧なのに、ここでは1980年9月新学期の約3日間が現在進行形の感覚で差し出されるのだ。

チャラい体育会系群像の中、文化系資質を持った主人公に監督の自画像を映し出しつつ、ハードロックやニューウェイヴ系、初期HIP-HOPのヒット曲が時代色を明快に示す。問答無用の祝祭感と、湿り気のない透徹した無常観の同居。めっちゃ陽性の『方丈記』だよ!

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平沢 薫

今、この時もまたかけがえがない

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 '93年の「バッド・チューニング」でも、リチャード・リンクレイター監督は、あらゆる時間はそれがどんなクダラナイものであれ、等しく価値があり、すべて尊い、ということをフィルムに映し出した。それを分かりやすい形にしたのが「6才のボクが、大人になるまで。」。本作も同じものが映し出されるのだが、これまでとは違う部分がある。この映画には前述の2品にあった、登場人物がふと遠くから現在を俯瞰してそのかけがえのなさに感じ入る、という瞬間がない。観客は、映画が終わってそれに気づいて、映画の外でその思いに至るのだ。ちなみに音楽監修は「6才〜」と同じランドール・ポスターとメーガン・カリアーで、今回もハズレなし。

この短評にはネタバレを含んでいます
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