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アズミ・ハルコは行方不明 (2016):映画短評

アズミ・ハルコは行方不明 (2016)

2016年12月3日公開 100分

アズミ・ハルコは行方不明
(C) 2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

ロジックよりも感性に訴えかける異色のフェミ映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 とある地方都市を舞台に、うだつの上がらない平凡な独身女性・安曇春子の憂鬱な日々を柱にしつつ、時間軸の異なる複数の人間模様を並行しながら描くことで、現代の日本社会における女性の生きづらさを浮き彫りにしていく。
 物語の構成としては極めて難解かつ複雑なのだが、しかしロジックよりも感性に訴えかけてくる松居大悟監督の演出は意外にも明快。ビジョンが一貫しているだけに、身を委ねていくうちに自ずと筋道が見えてくる。見事な語り口だ。
 ただ、男ばかりをボコる少女ギャング団の存在は賛否あるはず。アンチミソジニーの極端な象徴である彼女たちは、それゆえにミサンドリーを積極的に肯定しかねない危うさも孕んでいる。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

『溺れるナイフ』に続き、賛否両論間違いなし!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

「ありきたりな日本映画にしたくない」という想いから原作の時系列を崩し、エピソードをシャッフルした松居大悟監督の判断は正解。そのため、謎解きミステリーを期待すると、肩透かしを喰らうかもしれないが、『溺れるナイフ』に続く、感覚的かつ刺激的な青春映画に仕上がっているのは事実。『私たちのハァハァ』の自転車遠征組がパワーアップしたような少女ギャング団の存在は、パン・ホーチョン監督作『出エジプト記』のような不気味さもあり、ラストシーンも印象的。ボロボロになる蒼井優とチャラ過ぎる高畑充希の演技は圧巻だが、とにかくこの2人で本作を撮ったことは、松居監督のキャリアとしても集大成的であり、一皮ムケた感もある。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

86世代当事者たちの「旗」

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『自分の事』を端緒に『ワンダフル』『ハァハァ』と続く女性主体の松居大悟作品としてひとつの集大成か。『桐島』『ゆとり』の枝見洋子Pとの共闘で、「86世代」の時代精神を象徴する一本になったと思う。肝は社会学的な分析より、当事者のふわっとした「感覚」で乗り切っていること。

実は各世代を描くパノラマ的群像劇だが、おやじとJK(特に前者)は戯画的な異物で、隣接世代は通じ合える先輩後輩といったグラデーションがある。バンクシーあるいは『ブリングリング』辺りと接触するN.Y.やL.A.と日本の地方都市の落差等は原作の持ち味で、こちらは地元感すらアズミ・ハルコの小宇宙に浮遊する全体が心象風景のような映画だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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