疾風ロンド (2016):映画短評
疾風ロンド (2016)ライター2人の平均評価: 3
東野圭吾原作なのに、肩の力を抜いて楽しめる
加賀恭一郎な阿部寛を期待すると、「トリック」の上田次郎風だったり、生物兵器を探す目印がテディベアだったりと、東野圭吾原作に、ほぼほぼ忠実ながら、その意外性が面白いサスペンス・コメディ。「サラリーマンNEO」の吉田照幸監督らしいオトナの事情を扱った脱力系の笑いや、まさにハマリ役としか言いようのない大島優子の白銀を舞台にしたアクション・シーンなど、じつにウエルメイドな作りになっている。ただ、いつも以上に抑えた演技で不気味さを醸し出すムロツヨシとは反対に、やりすぎな柄本明の出演シーンだけはコントに見えてしまい、ちょっといただけない。劇場版「名探偵コナン」ぐらい肩の力を抜いた気分で観るのをおススメ。
本格的な雪上アクションとユルいギャグのバランスが良し
医科学研究所から盗まれた生物兵器が雪山に隠され、上司から秘密裏に奪還を命じられた中間管理職の研究員が、スキー場スタッフの協力を得て捜索に乗り出す。ただし、探し物が生物兵器だとは絶対に知られてはならない。研究所の存続に関わるからだ。
上司の命令に従って嘘に嘘を重ねたせいでどんどん窮地に陥る主人公の滑稽な姿が、息子と向き合うことのないまま深い溝のできた自身の親子関係と絶妙にシンクロしていく。リスクを避けて長いものに巻かれがちなサラリーマンのお父さんには耳の痛い話がてんこ盛りである。
サスペンスコメディとしても出来は上々。本格的な雪上アクションとユルいギャグのバランス感覚で飽きさせない。