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愛の渦 (2014):映画短評

愛の渦 (2014)

2014年3月1日公開 123分

愛の渦
(C) 2014「映画 愛の渦」製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

なかざわひでゆき

裸だらけの密室空間で晒される日本人の性(さが)

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 とあるマンションの一室で行われる乱交パーティの人間模様を描いた作品。原作舞台などの予備知識が全くないと、アングラな重苦しい映画を想像してしまいがちだが、これが意外にも(?)大らかな人間愛を内包したユーモラスな風刺ドラマに仕上がっている。
 集まったのは後腐れなくセックスがしたい8人の平凡な男女。お互いの裸も性欲も晒さねばならない密室空間で、やがてそれぞれの本音や感情が絡み合っていく。
 愚かで滑稽で哀しくて、だからこそ愛おしいのが人間ってもの。とりあえず自己紹介から始めてみたり、ケンカしても結局は和を重んじちゃったりする日本人の性(さが)も絶妙に描き込まれ、ついついクスッと笑わされてしまう。

この短評にはネタバレを含んでいます
中山 治美

体より心が素っ裸にされる事の恥ずかしさ

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 大根仁監督『恋の渦』の原作者として注目を浴びることとなった三浦大輔監督。合コンにラブホの一室など性欲渦巻く場所を好んで描くが、俗世界でこそ人間の本性が露になることを知っているからだ。そして、本作の舞台は乱交パーティー会場。誰と一戦を交えるのか? 駆け引きを展開する男女の本音と、咄嗟につく嘘の滑稽さが凝縮された、一言一言のセリフの上手さに唸らされる。
 そもそも彼らは、前戯が面倒ゆえに風俗を選んだはずだ。なのに結局は、情に振り回されてしまうという人間の哀しき性。愚かだけど愛おしい、三浦監督ならではの人間讃歌である。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

『ゼロ・グラビティ』にも似た映像体験

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

 早い話、一晩で3回セックスする映画。とはいえ、そこに至るまでに初対面の男女の駆け引きが、これでもかというほど剥きだしに描かれる。そして、彼らを覗き見している感覚に襲われる我々は、三回戦を終え、朝を迎えた登場人物たち同様、恐ろしいほどの疲労と倦怠感に襲われる。それだけ観る側も体力を要するが、これはもう『ゼロ・グラビティ』や『グランド・マスター』にも似た、映像体験と言ってもいい。
 池松壮亮と門脇麦演じる男女は、まるで現代の『ジョンとメリー』にも見えるが、そうは問屋が卸さないところもいい。難をいえば、舞台版では終始クールだった窪塚洋介演じる店員に、ラストで人間味を持たせてしまったことぐらいか…。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

今年の新人女優賞、早くも超有力候補が登場!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ポツドールのオリジナル芝居を鑑賞済みの人も、映画版は絶対観た方がいい。なぜなら舞台版になかった乱交セックスシーンにがっつり取り組んでいるから! ただしエロというより体当たりの気迫が際立つ。この真摯さこそが三浦大輔。例えばカラッとしたポップ感で、チャラさの中に鋭い人間洞察力を働かせた“陽性”の兄弟作=『恋の渦』の大根仁との資質の違いもよくわかるはず。

ハードな現場をこなした役者陣は皆素晴らしいが、特に地味なメガネ女子大生を演じた門脇麦の存在感はだんとつ。本作から『闇金ウシジマくんPart2』(5月16日公開)のホストに貢いで身を持ち崩すフリーター役へとつながっていく。新人女優賞は決定か?

この短評にはネタバレを含んでいます
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