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白ゆき姫殺人事件 (2014):映画短評

白ゆき姫殺人事件 (2014)

2014年3月29日公開 126分

白ゆき姫殺人事件
(C) 2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 (C) 湊かなえ / 集英社

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

清水 節

マスメディアが物語を捏造し、ツイッターが悪意を増幅する

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 現代人のはらわたを描かせれば当代一の湊かなえの原作を、中村義洋監督は鮮やかに映像に仕立て上げた。20~30代の俳優陣の演技力が見事に引き出されている。同時代的テーマへ斬り込みつつも娯楽性豊かで、今年の邦画ベストテンに食い込むべき一品だ。
 
 殺人事件に群がる興味本位の人々と、苛まれた当事者たちの想いが積み重ねられる。マスメディアが物語を捏造し、ツイッターが悪意を増幅する。後半に行くにしたがい、メディアによって醸成される悲劇の連鎖が極まっていく。『赤毛のアン』のエピソードと、容疑者とTVクルーの出会いのエピソードは、人間本来のコミュニケーションとは何かを訴える情感溢れる場面として、胸を打つ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

観やすさを優先した良質のエンタテイメント

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

 とにかくあの原作をまとめ切った映画監督・中村義洋の職人技を堪能する作品である。本作でもスゴすぎる貫地谷しほりをはじめ、次々に登場する若手キャストによる証言の数々と、女子あるある満載で構成された展開は、ツッコミを入れる間もないほど、めまぐるしく2時間超えの尺も飽きさせない。
 ただ、同じ湊かなえ原作を映画化した『告白』のときのような映像のギミックや衝撃はないに等しく、マスコミやネット社会の怖さを描いているという割にツメは甘く、後味もサッパリ。要は観客に疲労感やカタルシス、トラウマを残すというより、観やすさを優先した良質のエンタテイメントだといえるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

テクニカルで完璧。これぞプロの仕事!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

まず湊かなえの原作を読了済みの人はびっくりするはず。あの“資料集”的な異色小説を、何とも鮮やかに再構築しているからだ。まさに日本で最も原作小説を正確かつ批評的に読める監督=中村義洋の面目躍如!

むろん普通に観ても抜群に面白い。スクールならぬOLカースト的なサバイバルを基本に、現代メディアの浅はかな精神性を切り取ったミステリーにしてブラックコメディ。

各々の証言が食い違う話法は黒澤明『羅生門』系だが、同時代性に向き合った題材、計算の行き届いたキャッチーな組成は伊丹十三に近い。中村監督は『マルサの女』に触発され、『スーパーの女』の助監督を務めた人だが、本作は最も師匠に肉薄した一本ではないか。

この短評にはネタバレを含んでいます
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