ADVERTISEMENT
15歳以上がご覧になれます

リアリティのダンス (2013):映画短評

リアリティのダンス (2013)

2014年7月12日公開 130分

リアリティのダンス
(C) “LE SOLEIL FILMS” CHILE・“CAMERA ONE” FRANCE 2013

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.4

なかざわひでゆき

稀代の異端児が己の魂のルーツを辿る

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 過去のホドロフスキー作品に比べると、口当たりが優しくなった、丸くなった、分かりやすくなった。そんな印象を受ける映画だ。
 しかし、そこは腐ってもホドロフスキー。自らの少年時代を脳内イメージ的なリアリズムで再構築していくわけだが、母親のセリフが全部オペラ調だったり、宗教的なシンボリズムが散りばめられていたり。グロテスクなエロティシズムやフリークスへの偏愛など、フェリーニ的なイメージの洪水にもニンマリさせられる。
 老境に達した稀代の異端児が己の魂のルーツを辿る物語。なので、全ての映画ファンにオススメとは言えないものの、自らの異形性を少なからず自覚している者ならば琴線に触れる点も多いはずだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

ホドロフスキー初心者はコレを最初に観るべし。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

もはや幻同然な70数年前の家族の記憶を、現地に帰って自分の息子らと再現し、映画という幻のメディアで物語る。ファンタジーとリアリティが一体となって輪舞する、まさにタイトルどおりの作品。強権的で無神論者の父親が遍歴を繰り広げたり(本作自体が彼の魂の“治療”でもある)、母親の台詞が全部アリア調だったり(実際オペラ歌手を夢見ていたらしい)…同名の自伝が基だが、使われたのは500頁中、最初の50頁だけ。ぜひ観てから読むべし、監督にとってのリアリティとは如何なるものか、よ~く判って大笑い! その語り口は以前より柔らかで判りやすく楽しいが、過去作すべてにも繋がるイメージの奔流とその速度はやはり他に類がない。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

20年以上を経ても揺るぎないホドロフスキー・ワールド

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 バイオレンスと鮮血、エロスとセックス、フリークスと狂気。23年のブランクを経てもホドロフスキーはホドロフスキー。ファンとしてはそんなエッセンスの健在が、まず嬉しい。

 自身の少年時代に正面から向かい合う作家的な姿勢も頼もしく映る。社会の変貌や両親の変容といった大人のグロテスクな世界に直面する際の恐怖や勇気。寓話のような物語は純度の高いキッズ・ムービーにして衝撃のホラーという奇跡のバランスを保つ。コレは凄い。

 “辛い年月の重さに耐えても、心の中にはまだ少年がいる”と語るホドロフスキー。84歳になってもそう言える精神と、それを反映した壮絶なイメージの連続に圧倒される。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

ホドロフスキーによるホドロフスキー

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

「ホドロフスキーのDUNE」を見たなら、この映画を見ないわけにはいかないだろう。あちらは、ひとりの監督が描くホドロフスキーだが、こちらはホドロフスキー自身が描くホドロフスキー。本人自身が本人役で登場するのは2作とも同じだが、そのキャラクターの何と異なることか。本作は彼自身の解釈による彼の少年時代なのだが、その中に現在の彼が何度も登場し、少年時代の彼の背後に立って、彼には聞こえない言葉を語りかける。

彼の父親を演じるのが「エル・トポ」に出演した長男で、彼が出会う行者が「サンタ・サングレ」に出演した次男。五男がアナキスト役を演じて音楽も担当。これは家族たちによる家族の物語でもある。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

これぞサイコマジック! ホドロフスキー版『アマルコルド』

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『サンタ・サングレ』のエッジ&メロウな家族劇から明るく突き抜け、ホドロフスキー監督作の中で最もマイルド。激動の政治を背景にした自伝的内容は明らかにフェリーニの『アマルコルド』を踏まえたものだが(サーカス的なフリーク趣味など資質の共通点も)、破格のマジック・リアリズムによる詩的昇華はまさに独特の芸風。

「将来の君は既に君自身だ。探しものは自分の中にある」と現在のホドロフスキーが少年時代の自分を抱きしめるシーンの甘美な抒情がたまらない。一方、ずっとオペラ調に歌ってるお母さんの大らかかつ狂った下ネタなど爆笑。アヴァンギャルドとギャグが密着している点でシュヴァンクマイエルや鈴木清順のファンにも推薦!

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT