ダイバージェント (2014):映画短評
ダイバージェント (2014)ライター5人の平均評価: 3
ヒロインの魅力が牽引するシリーズ序章編
人間が5種類に分類された最終戦争後の未来世界で、その全ての特性を兼ね備えたがために異端者(ダイバージェント)として迫害される少女の戦いを描く。
まずは主演のシャイリーン・ウッドリーが素晴らしい。日本上陸が著しく遅れたテレビドラマ「アメリカン・ティーンエイジャー~エイミーの秘密~」を現地で見て以来ずっと注目していた若手女優だが、隣の女の子的な親しみやすさと聡明な逞しさを兼ね備えた独特の個性が、人間の本質を否定したファシズム的な共同体に反旗を翻すヒロインの成長と覚醒の物語を牽引する。
あくまでも序章なのでカタルシスには今ひとつ乏しいが、次回作以降の展開を期待させるには充分な仕上がりだ。
ソロリティものor軍隊成長モノぽくもあるが。
どうしても『ハンガー・ゲーム』と比較してしまうYAファンタジー的設定だが、ややインドのカーストを想わせる「5つのファクション」のアイデアはちょっと面白い。ただ発端篇らしき本作では、5つの社会的役割がイマイチ明確でないうえに登場しないファクションも多く、何故主人公が「無欲」(ま、文化系)でなく「勇敢」(ま、体育会系)を選んだのか、そもそも「異端者」の存在がどれほど危険なのかほとんど判らないのは難。ヤマカシみたいに街をピョンピョン跳ねてばかりで警察機構が務まるのかも謎だ。いろいろ納得は出来ないまでも結構飽きずに観れるのは『ファミリー・ツリー』での演技力を改めて証明するS.ウッドリーの存在に尽きる。
運命を自分の手でつかんだ少女が世界を救う(予定?)
何よりもトリス役のシャイリーン・ウッドリーが素晴らしい。目力があるというか、表情演技が巧み。華は無いが目が離せない不思議な女優で、トリスが武闘派へと進化するトレーニング場面では結果がわかっていても彼女を応援してしまう。第1弾の本作は社会構造や人物関係などの全体像描写に重点を置いたのでやや冗長。共同体内をサバイバルするための協力や足の引っ張り合いはハイスクールものっぽく、殺人トラウマを背負うこともないのが物足りず。トリスのダイバージェントゆえの葛藤や政権転覆を狙うエリート集団とのさらなる攻防は、続編以降に期待したい。多分、運命を自分の手でつかんだ少女が世界を救うんだよね?
”何を求めるか?”次第のネクスト『トワイライト』
ベストセラーの映画化、未知のシステムに翻弄される少女、許されない恋。『トワイライト』『ハンガーゲーム』の“次”を狙って製作されたのは明白で、そのポジションを勝ち取る資格は十分にある。
高所から低所へ、ピョンピョンと飛び跳ねる、パルクール的な若々しい立ち回りは大きな魅力。問題はそんなアクションとロマンスの比重で、後半に進むほどメロドラマの比重が大きくなる。どちらを求めるかで、評価は分かれるのではないだろうか。
『トワイライト』を好む方には素直に勧められる。が、ニール・バーガー監督の前作『リミットレス』を好む向きには、いささか肩透かしとなるかもしれない。
ディズニー・プリンセスの次はこれ?
ディズニーアニメの戦うプリンセスを見て成長した女子は、10代になると「ハンガーゲーム」と「ダイバージェント」を見るようになるということだろうか。どちらも主役は戦う女子、敵は社会のシステム、そして全米大ヒット。昨今、ベストセラーYA小説が多数映画化された中、この2作は生き残って、続編が製作されている。
それとは別に気になるのは、憎まれ役ピーターを演じるマイルズ・テラー。彼は、「クロニクル」のジョシュ・トランクが新たに描く「ファンタスティック・フォー」のMr.ファンタスティック役。本作でも「21オーバー」でもヒーローが似合うようには見えないので、どんなヒーローになるのか楽しみだ。