森 直人

森 直人

略歴: 映画評論家。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「Numero TOKYO 」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況: YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。4月3日より、荒木伸二監督(『ペナルティループ』)の回を配信中。ほか、井上淳一監督(『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』)、三宅唱監督(『夜明けのすべて』)、山本英監督(『熱のあとに』)、リム・カーワイ監督&尚玄さん(『すべて、至るところにある』)、木村聡志監督&中島歩さん(『違う惑星の変な恋人』)の回等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

森 直人 さんの映画短評

« Prev 全1,053件中6~10件を表示しています。 Next »
  • リンダはチキンがたべたい!
    わんぱくでキュートな驚異のバンリュー(郊外)系アニメーション
    ★★★★

    アヌシー最高賞&カンヌACID選出など華麗な戦歴で話題のフレンチアニメだが、確かにユニークな傑作。主人公は郊外の団地に住む母娘で、つまりバンリュー映画の系譜。8歳の少女リンダは亡き父親の得意料理を食べたい!と母ポレットに迫るのだが、それがハンガリー料理のパプリカチキンなのだ。

    街では「賃金上げろ!」と労働者達のストライキが巻き起こっている。もうナチュラルに社会派。そして作画が独特。絵柄自体は『タンタン』風にも見えるが、ラフ原画の如く線は省略され、人物は異なる単色で塗り分けられている。全体はドタバタ喜劇のノリにミュージカル調も付与。監督夫妻が参照した一本に『地下鉄のザジ』を挙げているのは納得!

  • ゴッドランド/GODLAND
    「こことよそ」をめぐる余りに根深い歴史と地政学
    ★★★★★

    『理想郷』ではスペインvsフランスでエグい諍いが繰り広げられたが、本作は北欧篇アイスランドvsデンマーク。キリスト教ルーテル派の青年牧師が、ヴァイキングの末裔とおぼしき現地ガイドと衝突を繰り返す。画面構成は劇中に登場するコロジオン湿板写真(ダゲレオタイプの次の形式)が意識され、日本だと幕末から明治初頭辺りの時代に当たるが、現代のバックラッシュの様相を二重写しにしているのは明らかだ。

    監督は84年生の気鋭フリーヌル・パルマソン。彼は両国の中間者でもある。荒々しい自然の風景も圧巻。英国のデザイナー・思想家・詩人、ウィリアム・モリスの1871年の旅の記録書『アイスランドへの旅』も参照したい。

  • 12日の殺人
    「何」が彼女を殺したのか?
    ★★★★

    『落下の解剖学』の前年(2023年)にセザール賞を席巻したミステリーの名手、ドミニク・モル監督の秀逸なスリラー映画。『殺人の追憶』や『ゾディアック』の系譜に並ぶ未解決事件ものであり、謎解きではなく、まさにサスペンスの語義である「宙吊り」(未決定の状態)の純度や強度を追求した語りが興味深い。そこにフェミサイドの主題を盛り込み、現代社会のザラついた感触を伝える逸品になっている。

    事件被害者、21歳の女性クララをめぐる複雑な人間模様が明らかになっていく展開の中で男性優位の問題がせり上がる。実録タッチを補強するリアルな描写力が流石だ。音楽のオリヴィエ・マリゲリによる「1983年の曲」など芸が細かい!

  • デューン 砂の惑星PART2
    格の違う映像表現
    ★★★★★

    もし当初のスケジュール通りに本作が公開されていたら、今年のアカデミー賞の結果は相当荒れたかも。F・ハーバートの原作から意図されていた『アラビアのロレンス』のDNAを独自培養し、IMAXの「砂」の芸術が全面展開。サンドワームの砂上スキーひとつ取っても恍惚&悶絶。映画史上、最高に洗練されたヴィジュアルワークの凄みに震えた。

    ヴィルヌーブ監督の世界観の作り込みは圧巻。役者の目玉はフェイド=ラウサ役のA・バトラー。リンチ版でスティングが演じ、ホドロフスキーはミック・ジャガーを想定していた悪の貴公子がこんな強烈キャラに結実するとは。『砂漠の救世主』の物語に踏み出すPART3は如何なる境地に達するやら!

  • ネクスト・ゴール・ウィンズ
    ワイティティ流の美味しく食べやすいソウルフード
    ★★★★★

    なんて気持ちの良い映画! まずはハリウッドセレブ化したワイティティが本来の世界に帰ってきたことを喜びたい。舞台は米領サモア。ロケ地はオアフ島だが、母国ニュージーランドでの初期作『ボーイ』等に近いローカル色を漂わせるポリネシアへのバック・トゥ・ルーツ映画。作家としての成熟もあり、フィルモグラフィ全体でも出色の一本となった。

    題材は『ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム~』と同じ実話だが、『がんばれ!ベアーズ』型の黄金の説話構造と合体。さらにサモア流の大らかな人生哲学をたっぷり乗っけた、人懐っこい絶品の仕上がり。タビタさんの台詞「なら負けましょう。皆と一緒に」にはほっこり。

« Prev 全1,053件中6~10件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク