清水 節

清水 節

略歴: 映画評論家/クリエイティブディレクター●ニッポン放送「八木亜希子LOVE&MELODY」出演●映画.com、シネマトゥデイ、FLIX●「PREMIERE」「STARLOG」等で執筆・執筆、「Dramatic!」編集長、海外TVシリーズ「GALACTICA/ギャラクティカ」DVD企画制作●著書: 「いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命」「新潮新書 スター・ウォーズ学」●映像制作: WOWOW「ノンフィクションW 撮影監督ハリー三村のヒロシマ」企画・構成・取材で国際エミー賞(芸術番組部門)、ギャラクシー賞(奨励賞)、民放連最優秀賞(テレビ教養番組部門)受賞

近況: ●「シン・ウルトラマン」劇場パンフ執筆●ほぼ日の學校「ほぼ初めての人のためのウルトラマン学」講師●「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」劇場パンフ取材執筆●特別版プログラム「るろうに剣心 X EDITION」取材執筆●「ULTRAMAN ARCHIVES」クリエイティブディレクター●「TSUBURAYA IMAGINATION」編集執筆

清水 節 さんの映画短評

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  • ひとよ
    愛憎相半ばする佐藤健の眼差しが血縁にもう一度可能性を抱かせる
    ★★★★★

    母は父を車で圧殺した。ぶつかり合いを超え、度を過ぎた家族の衝突のメタファーだ。子供たちのためを思い、正しさを信じた過激な行為。揺るぎない母の信念/情念を田中裕子が見事に体現する。それから15年、十字架を背負った兄妹3人が、それぞれの個性を露わにし、容赦なくぶつかり合う。苦悩する鈴木亮平。奔放な松岡茉優。屈折しながらも愛を希求する佐藤健の眼差しがいい。このところ「擬似家族」に真の繋がりを求める物語に親和性を抱いてきた私たちに、血縁から逃避せず、ガチで向き合うことの可能性を痛感させる。白石和彌監督の新境地だ。

  • ジョーカー
    真の善意の体現者を描き本作に拮抗しうるヒーロー映画を待望する
    ★★★★★

    共感と嫌悪が入り混じるが、紛れもなく21世紀初頭の世界を象徴する傑作だ。不寛容な社会で醸成される悲哀と絶望。愛など枯れ果てジョーカーが生まれるべくして生まれる様が、説得性を持ちつつ丹念に描かれる。バットマンとジョーカーが表裏の存在であることへの示唆は興味深い。ふと、敗戦直後の混沌を背景に、刑事と犯人に分かれた運命に言及する黒澤明の『野良犬』の台詞「世の中のせいにして悪い事をする奴はもっと悪い」を想起した。モラルで均衡を保つ状況を遥かに超える荒みきった今。真の善意を体現する者を描くことこそ、本作と現代社会へのアンサーだ。映画人は『ジョーカー』に拮抗しうるヒーロー映画を生み出さなければならない。

  • ドッグマン
    ミニマムな関係を通して描く暴力にまみれた世界の暗喩
    ★★★★

    先読み不能な展開。主人公の行動に理念らしきものは無い。仕事であるゆえ犬を愛でている。娘を想う心情も描かれる。しかし感情移入など出来ない。粗暴な厄介者に従属し、不毛な関係を断ち切れない。舞台はイタリアの殺伐とした海辺の街。ろくでなしの弱者である主人公と、力でねじ伏せる無法者とのバランスの変容が見ものだ。『ゴモラ』で裏社会を活写したマッテオ・ガローネ監督が、ミニマムな人間関係を用意して、支配する者と支配される者の愛憎相半ばする共依存の哀れな末路を、容赦なく見せる。もちろん、暴力にまみれた世界の暗喩でもある。私たちが生きる社会を一皮剥けば、露わになる普遍的な真理を直視したい。

  • 火口のふたり
    世界の終わりを前にして快楽に身を委ねる「噴火の子」
    ★★★★

    “終わり”までの猶予に、再会して身体的本能に身を委ねる、決して若くはないふたり。強烈な情念や湿度を感じさせず、エロスと呼ぶにはどこか淡白なその姿は、生と死の狭間で、ただ刹那的に、軽やかに踊るかのようでもある。中高年なら自画像を重ね合わせたくもなるだろう。大きな物語と個の営み/世界とセカイ、その結び付き。思想よりも生活。抗いようもない富士山大噴火と、人間の所業に起因する気候変動の違いはあれど、『天気の子』のふたりが選択したその先も、案外近しい未来ではないか。監督には、俳優の身体性なくば映画ではないとしてアニメを除外せず、編集発行人を務める映画雑誌の年間ベストの俎上に乗せ競い合わせてほしいものだ。

  • ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
    夢の続きを生きるレオ×ブラピの最凶バディに忍び寄る時代の終焉
    ★★★★★

    華やかな時代の残り香を微かに感じる1969年ハリウッド。風俗の再現は美術・音楽・衣装において完璧。スティーブ・マックイーンになり損ねた男がTVドラマの悪役を得て生き延びている。その悲哀をディカプリオは可笑しく切なく体現する。支えるブラピとのバディぶりは最強にして最凶。この街の片隅では、ブルース・リーもシャロン・テートも明日を夢見ている。ラロ・シフリンやサイモン&ガーファンクルをかけまくり、人に街に時代に、あらん限りの愛を注ぐ。そこへ忍びよる禍々しい影。ハリウッドを決定的に変えてしまった8月9日。夢の時代の終焉に向けた怒涛の展開に、タランティーノは持てる技を全て詰め込んだ。集大成にして頂点。

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