(原題:SPASI I SOKHRANI)奥深い映画だと思う。フローベールによる原作のうち、映画では後半しか描かれていないが、まったく欠落感がない。冒頭、山を切り崩して開いたような荒涼とした風景の中にある一軒家で、胡散臭い商人からアクセサリー品を勧められているヒロインが映し出されるが、その描写だけで主人公の恵まれない境遇といずれ訪れるであろう悲劇が観る者に強く印象付けられるのは、監督アレクサンドル・ソクーロフの力量ゆえである。 バックに流れる宗教曲と、絶えず聞こえる蝿の羽音が、物語全体に漂う終末感と
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