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『キャラクター』菅田将暉&Fukase 単独インタビュー

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『キャラクター』菅田将暉&Fukase 単独インタビュー

約7年ぶりの再会で初共演

取材・文:くれい響 写真:中村嘉昭

「20世紀少年」など浦沢直樹の漫画にストーリー共同制作者として携わってきた長崎尚志の原案・脚本を、『帝一の國』の永井聡監督が映画化した『キャラクター』。4人家族を狙った殺人事件の現場で犯人の顔を目撃した売れない漫画家が、その犯人をモデルにした漫画で成功を収めたことから人生が一変していく。主人公・山城を演じる菅田将暉と、美しき殺人鬼・両角(もろずみ)役で俳優デビューを果たした「SEKAI NO OWARI」のボーカルFukaseが、俳優として、ミュージシャンとして共鳴する部分などについて語った。

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初めて買ったCDがセカオワだった

菅田将暉&Fukase

Q:これまで、お互いにどのような印象を持っていましたか。

菅田将暉(以下、菅田):高校生のときに初めて買ったCDがセカオワさんのアルバム「EARTH」でした。その中に収録されていた曲がカラオケで歌われていたのか、何かのタイミングで聴いていたのかで気になっていたんです。

Fukase:菅田さんとは、僕らが主題歌(「マーメイドラプソディー」)を担当した『海月姫』(2014)の撮影現場で初めてお会いしたんです。菅田さんは女装されていて「からだ細っ!」というのが第一印象(笑)。20代なのに、どこか10代に見えましたし、「なるほど、役者さんってスゴいなぁ」と思ったのを覚えています。

Q:ちなみに、ミュージシャンとしてはどのようなイメージを持っていましたか。

菅田:「EARTH」に収録されている曲を聴いて、Fukaseさんが作られた美しい音楽の奥に、共感できる哀しいものがあったんです。どこか“いなたい”(垢ぬけない、泥臭い)というか、人間味にあふれているイメージが強かったです。

Fukase:確かに、当時の自分は「こう見せたい」という思いより、等身大というものを意識していましたから、泥臭かったのかもしれません。菅田さんは役者としても、いい意味で飾らず、気取らず、それが歌にも反映されているような気がします。ライブに関しても気の合う仲間で音を出すという、音楽の根底にあるものを意識されているように感じました。

菅田:見透かされてますね(笑)。僕のバンドメンバーって、『何者』(2016)の撮影で出会い、大学の音楽サークルの仲間を演じて仲良くなったんです。もともと「カラスは真っ白」というバンドを組んでいたミュージシャンで、みんなとの時間が楽しくてしょうがないんです。

Fukase:僕も幼なじみのメンバーのことが大好きだし、そういう人間と一緒に音を出すのが楽しいという感覚は共通していますね。

Fukaseが1年半のワークショップで得たもの

菅田将暉&Fukase

Q:山城と両角の関係をどのように解釈し、作っていったのでしょう。

菅田:撮影前にいろいろ考えましたが、撮影現場で両角と対峙したとき、それまで考えていたことが、どうでもよくなりました。それだけFukaseさんの両角が魅力的で、絶対に近づいてはいけない甘い果実のようだったんです。そんな禁断の果実に手を出してしまった山城の人生が翻弄されていく話なので、僕はただただ、その引力に引き込まれながら順応していくだけでした。

Fukase:役者としてズブの素人の僕にとって、最初はどうやって役を作るか、ということすら考えられませんでした。だから、とにかく演技のワークショップに参加し、その課題をこなすという作業をしていきました。幸いクランクインの1年半前からレッスンを始めることができ、最後の1か月ぐらいで、ちゃんと両角という役と向き合うことができました。

菅田:僕、これまでワークショップみたいなものにあまり参加したことがないんです。だから、Fukaseさんがどんなレッスンを受けたのか、めちゃくちゃ気になります。

Fukase:例えば「親友のお葬式に行く直前」「就職の面接に行く直前」といった状況をアドリブで演じたり、誰かになりきって先生からインタビューを受けたり。僕はそのとき、ハイボールにハマっていたので、ウイスキー会社の社長になりましたが、人間の根幹の部分を知っていくレッスンでもあったので、興味深いことばかりでした。

Q:ちなみに、Fukaseさんはライブなどでも“ミュージシャンFukase”を演じているのでしょうか。

Fukase:自分で演出してストーリーも作っていく中で、楽曲ごとに自分を変えることはよくありますね。わざと明るい曲とダークな曲を、交互にやってスイッチングしたりもしていますし。

菅田:セカオワさんのライブに行ったときも、ステージに立っているときと楽屋でお会いしたときで、Fukaseさんのイメージがだいぶ違いました。だからこそ、自分の延長線であり、自分じゃないものを表現することに慣れていらっしゃって、ワークショップにもすんなり取り組めたんだろうなと思います。普通、できないですよ!

Fukase:だからミュージシャンと話が合わないのか!? 他のミュージシャンと話してても、どこか客観的に見てしまうんですよ。自分は「天才肌だなぁ」って(笑)。

菅田:少なからず、僕が今まで出会ったミュージシャンの人たちとは違いますね。というか、Fukaseさんはどちらかというと役者っぽい人だと思います。

芝居では先走る感情を抑えることが大事

菅田将暉&Fukase

Q:演じた役柄に共感することはありましたか。

Fukase:歌っていると、感情と完全にリンクする瞬間があるんです。何百回も歌っている曲であっても涙が出てきたりもしますが、そのとき感情を100%出してしまうと、どこか荒っぽく見えてしまう。そういうことをメンバーのSaoriからダメ出しされて、あえて70%ぐらいまで落とすことで綺麗に伝える表現を心掛けているんです。この映画でも、両角の感情とリンクすることがあったとして、それを100%フルで出してしまうと、荒っぽい、嘘っぽいというか、独りよがりになると思ったので70%まで落とすよう心掛けました。

菅田:その発想って、役者すぎません(笑)? 気持ちが先走ってしまうのは役者としても「あるある」ですね。

Q:菅田さんは、今回は殺人鬼に翻弄される役柄でしたが『デスノート Light up the NEW world』(2016)などでヒールを演じていますよね?

菅田:テロリストを演じました。ただ、あのときはシンプルに夜神月(ヤガミ・ライト)という崇拝する神がいて、そこに殉じていく役だったので、決して自分発信ではなかったんです。もっと盲目的に演じていた気がします。

殺人鬼を演じながら書いたラブソング

菅田将暉&Fukase

Q:実際に共演されて撮影現場で感じたことは?

Fukase:気を遣っていただいて、僕がやりやすいようドーンと構えてくださった印象が強いです。“俺の胸に飛び込んでくれば大丈夫”と感じたので、しっかり飛び込んでいきました。

菅田:僕がFukaseさんの立場だったら、いろいろ不安だし、『帝一の國』でガッツリ組ませていただいた永井組だったので、みんなでFukaseさんが楽しく演じられる状況を作ろうと考えていたように思います。両角に山城が反応し、山城に刑事たちが反応するように、すべての発信元である両角が生き生きとしていないといけないですから。

Q:今回はお芝居での共演でしたが、今後はミュージシャンとしての共作も期待したいところです。

Fukase:撮影中、後に「silent」(ドラマ「この恋あたためますか」の主題歌)になるラブソングを書かなきゃいけなくて、控室で「ラブソングを書きながら殺人鬼を演じるのは大変です」と言ったら、菅田さんが「両角の山城に対する感情と恋愛感情って似てません?」と言ったんです。それで「いいアイデアだ!」と曲を書き上げたら、先方に「歌詞があまりに卑屈すぎる」とダメ出しされました(笑)。なので、菅田さんにはその責任を取っていただく意味で、ボツになった卑屈すぎる詞を一緒に歌ってほしいです(笑)。

菅田:確かにその卑屈な歌詞は気になるので、いつかタイミングがきたら責任を取らせていただきたいと思います(笑)。


菅田将暉&Fukase

初対面から約7年ぶりの再会にして、初共演を果たした2人。今や日本を代表する俳優とミュージシャンである両者の言葉からは、何事にも真摯に向き合う姿勢が感じ取れ、互いに対するリスペクトも強く感じられた。また、菅田がカメレオン俳優と呼ばれるように、取材中にカメレオンミュージシャンとしての片鱗もみせたFukase。まさに憑依型といえる2人が劇中で繰り広げる白熱バトルは、ファンならずとも見逃せないものになっている。

映画『キャラクター』は6月11日より全国公開

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