見どころ:名優・山崎努が主演を務め、『横道世之介』などの沖田修一と『キツツキと雨』以来に組んだドラマ。亡くなるまでのおよそ30年にわたり、庭の動植物を観察して描き続けた洋画家・熊谷守一をモデルに、晩年のある夏の1日を描く。山崎に熊谷のことを聞き、老画家を主人公にしたオリジナルストーリーを作り上げた沖田の脚本と演出、自身が敬愛する画家にふんする山崎の演技に期待が高まる。
あらすじ:画家の守一(山崎努)は、草木が生え、いろいろな種類の生きものが住み着く自宅の庭を眺めることを30年以上日課にしていた。妻と暮らす守一の家には、守一の写真を撮る若い写真家の藤田、看板を描いてもらおうとする温泉旅館の主人、隣人の夫婦など、来客がひっきりなしだった。
沖田修一監督の「若年寄」イズムが十全に発揮された一本。朴訥かつ巧緻な味わいの中に、微量の毒や風刺精神がぴりっと効いている。山崎努が自身のアイドルと語る熊谷守一の大切な企画を、ベテランではなく沖田監督に任せた事自体に感動。昆虫学者ファーブルの「アルマスの庭」等を連想する庭の造形と描写も素晴らしく、まさにひとつの宇宙といった趣。
設定は昭和49年、高度経済成長の延長で都市化の波が起こっており、美大生達による建設反対運動は三里塚闘争にリンクする時代の雰囲気アリ(その一方、お茶の間的なドリフターズの話題が出るさじ加減がいい)。樹木希林つながりの他、問題提起の在り方としても『人生フルーツ』に通じる。
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