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ナミビアの砂漠 (2024):映画短評

ナミビアの砂漠 (2024)

2024年9月6日公開 137分

ナミビアの砂漠
(C) 2024『ナミビアの砂漠』製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

大山くまお

河合優実を通して世界と社会を見る

大山くまお 評価: ★★★★★ ★★★★★

137分の間、ほとんどずっと河合優実が映り続けている映画。彼女がそこにいない場面が一つもない。観客は河合優実の心と体を通して、社会を、世界を見ることになる。主人公のカナは奔放に見えて、その実は逆のように思える(あんな彼氏じゃ別れたくなるのは当然だろう)。息苦しく、狭苦しい社会の中でもがき、人として正しくあろうと思い続けて心が壊れかけてしまう。そつなく働いているように見えて、役割を演じ続けることができない。頼れる家族もいなく、心を開ける友達もいない。すらりと伸びた手足が躍動するのが、何かを裏切って駆け出したときだけというのが象徴的だ。砂漠に憧れるカナのような人は世界のあちこちにいるのだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

彼女に起きていることは世界中で起きている

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

二股をかけている上、どちらの相手にもひどいことをする欠陥だらけの主人公。心の問題を抱えていることは次第にわかっていくものの、誰もそこを解決してはくれない。同じような状態にありつつ何もできずにいる人は、本人であれ、その人を愛する家族や恋人であれ、世界中にたくさんいるはず。ストーリーはゆっくりと焦らず展開(タイトルが出てくるのも映画が45分ほど進んだ後!)し、主人公の日常をじっくり見せていく。ここで語られることは、国境を超えて起きている話。そのすべてのシーンにいる河合優実はすばらしい。今年公開された「あんのこと」もすごかったが、今回も演技もリアルでスクリーン上の魅力もたっぷりだ。これからも見たい!

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森 直人

映画遺産を凶暴に喰らって2024年の最尖鋭に立つ!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

潜在能力ヤバすぎの異能、山中瑶子監督(97年生)の決定的な一撃を待ち望んでいた人は数多いはず。『あみ子』『おやすみ、また向こう岸で』『魚座どうし』……焦らされたが申し分のない137分が届いた! 河合優実という最高のタッグパートナーを得て。町田駅前を彼女が歩く、街と群衆の息吹が伝わるオープニングからすでに完全勝利宣言だ。

ベンチマークは『ママと娼婦』だけではない。「疾走」や「側転」などあらゆる先行の映画的バトンを勝手に奪取しつつ、そこらへんの日常を舞台に人間世界の「戦争」状態を見つめるタフな姿勢が際立つ。筆者にとっては「非戦」の可能性を探究した三宅唱の『夜明けのすべて』と今年双璧の成果だ。

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斉藤 博昭

共感/嫌悪が紙一重のキャラこそ、俳優の技量と勘が試される

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

カフェで目の前の友人の話より、近くの席の見知らぬ人の会話に耳を傾けてしまう。そんな主人公カナの行為を、独特のアングルと音の処理で示す冒頭から「これはちょっと新しい映画」と夢中に。
カナのその後の言動は、ひたすら共感しづらい。そんなキャラクターにもかかわらず、河合優実の肉体を借りると、正直さ、自由さがどんどん愛おしくなる不思議。これすべて、監督の計算どおりだろう。カナ=河合の異常レベルの一体感が、周囲の人、そして映画の観客を弄ぶように強烈引力で惹きつける。仕事場での態度の切り替えなど細部の表現も絶味。
作品としてもう少し訴える何かを求めたいが、監督&主演俳優への無限の期待感を抱かせただけで傑作。

この短評にはネタバレを含んでいます
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