ベルサイユのばら (2025):映画短評
ベルサイユのばら (2025)
ライター2人の平均評価: 3
美麗な作画で原作の名場面を再現
とにかくカラフルで美麗な作画に圧倒される。全編を貫いているのは「原作ファースト」の精神。オスカルとアンドレの関係にフォーカスして、長大な物語を上手く省略しつつ、名場面を忠実に再現している。余計な味付けや新しい解釈は見られないので、原作ファンも安心して観られるはず。けれん味やある種の過剰さは原作、宝塚歌劇、TVアニメの方が上かも。省略によってオスカルとアンドレの葛藤や心の移り変わりがわかりにくくなってしまった感もあるので、原作未読の方はぜひ原作を読んでから再見してほしい。宝塚歌劇のように、マリー・アントワネットとフェルゼンの物語もアニメで作ってほしい! と思ったファンも多かったのでは。
今ならではの製作意図が明瞭で気持ちいい
コアなファンではないが原作は何となく知っていて、今ならどうアニメ映画化されるのかに興味を抱いて作品を拝見。すると、今回の製作意図が明らかで、その明瞭さが気持ちいい。予告編ではキャラクターデザインが原作と似ていて微妙に違うのが気になったが、本編を見ると、あえて原作そっくりにしなかったのは「原作にある要素を抽出しつつ、まったくのイコールではないものを創る」を目指したゆえの造形と納得がいく。
物語は、オスカルとアントワネット、2人の人間の意思と生きざまに焦点を当てる。ヴィジュアルは原作の意匠を踏まえつつ、さらに抽象的かつグラフィカルな映像にアレンジ。情感を歌で描くミュージカルでもある。