JAWAN/ジャワーン (2023):映画短評
JAWAN/ジャワーン (2023)ライター3人の平均評価: 4
脳汁出っぱなしのポリティカルエンターテイメント
スーパースター、シャー・ルク・カーン主演の一大アクションエンターテイメント。刑務所長の主人公が無実の罪で投獄されていた女囚チームを率いて腐敗する政治家を叩き、困窮している民衆を救う序盤から3時間の上映時間中、ずっと脳汁出っぱなし。主人公の最強パパを誰が演じるのか? という問題を一人二役で解決する豪腕ぶりにも脱帽。アクションのビジュアルを追うのではなく、ド直球の政治的なメッセージに重きが置かれており、クライマックス近くで主人公が観客に向かってダイレクトに語りかける内容は、今の日本人こそ耳を傾けなければいけないもの。女性用の刑務所が、女性が連帯を深める場所として描かれていたのも興味深かった。
毒を以て毒を制す謎のダークヒーローと女囚軍団の活躍が痛快!
経済成長著しい現代のインド。しかし権力を握る与党政治家は私利私欲に走って富裕層ばかりを優遇し、欲の深い資本家は金にものを言わせて権力を私物化し、貧しい労働者や農民は搾取された挙句に見捨てられる。そんな理不尽な世の中を、神出鬼没の謎めいたヒーローと女囚軍団が斬って斬って斬りまくるわけだ。毒を以て毒を制すとばかり、巧妙に仕組んだテロ攻撃で警察を手玉に取りつつ、政治家や資本家の悪事を世間に暴いていく主人公たちの活躍が痛快!ボリウッド映画らしいスピード感とテンションで血沸き肉躍る。ちゃんと選挙に行け!政治家を見抜く目を養え!政府を厳しく監視しろ!というメッセージは日本人にも突き刺さりますな!
あれもこれも全部盛り
この頃のザック・スナイダー監督映画ではあまり見られなくなった、映画『300』の頃の派手で大仰なケレン味たっぷりのストップモーション/スローモーション、理由もなく背景で舞う何かの粒子、といった演出が今もたっぷり見られるのがインド映画。歌舞伎の"見得を切る"に似たあの感覚は、アジアの感性に合うということかもしれない。
本作にもその演出が満載で、さらにすべてが"全部盛り"。舞台は、昔の風習を守る小さな村から高層ビルの大都会まで。タッチは、古代叙事詩から『ミッション:インポッシブル』系現代アクションまで。ドラマは、復讐譚で刑務所ものでサイバー犯罪もので親子ドラマ。このヤリスギ感が快感。