野生の島のロズ (2024):映画短評
野生の島のロズ (2024)
ライター4人の平均評価: 3.8
その王道さが涙腺を直撃
いかにもドリームワークス・アニメーションな心地良いリズム感に、動物アニメとしての面白さもありつつ、無人島における過酷な弱肉強食や家族愛、果ては四季折々まで描写した丁寧な演出に驚愕。そして、特筆すべきはまるで水彩画のような色鮮やかな作画であり、あまりの美しさに息を呑むこともしばしば。ただ、同じく飛行シーンが印象的だった『ヒックとドラゴン』を手掛けたクリス・サンダース監督作として観ると、やっぱり王道・直球感は否めない。とはいえ、『アイアン・ジャイアント』~『ロボット・ドリームズ』を想起させる設定やメッセージなど、日本人好みの“泣ける”仕上がりになっている。
タイムリーかつタイムレスなテーマを語る
CG アニメーションに手描きのスタイルをミックスするのは最近よく見られる傾向。だが、これはまた一歩先に押し進める。美しいパステルカラーの風景は、まるで印象派の絵画のよう(監督によれば、宮崎駿にもインスピレーションを受けたとのこと)。キャラクターもCG独特のくっきりした感じがほとんどなく、この世界観に自然に溶け込んでいる。アニメーションというアートの可能性をあらためて感じた。ストーリーは、子育て、子離れ、コミュニティのために自分と違う仲間とも力を合わせることなど、タイムリーかつタイムレスなテーマを語る。ロボットらしさを失うことなく微妙な変化を演じるルピタ・ニョンゴの演技はすばらしい。
日本人にこそ刺さるのでは?
アニメーションスタジオとしても30周年の迎えて大きな存在となったドリームワークス・アニメーションの最新作。スタジオジブリ的なデザインのロボットに心が宿るのか?という手塚治虫的な物語。世界的に大ヒットを記録していますが、日本人にこそ刺さるのではないかと思うアニメーションでした。名作『ヒックとドラゴン』のクリエイターの新作ということで期待値高めで見ましたが、余裕でそれを乗り越えて来てくれて嬉しい収穫でした。ほぼほぼ人間が出てこないのですが、動物たちのキャラクターが濃くて、実に人間臭くて良かったです。吹替版もお薦めです。
色鮮やかな大自然、ロボットの純粋さが胸を打つ
ロボットが主人公の物語は、なぜここまで胸を締めつけるのか。それは、仕事をプログラミングされただけの彼らには、邪悪さが微塵もなく、ひたすら純粋だからだろう。大自然の中、動物たちからさまざまなことを学んでいくロボットが、自分に組み込まれたプログラムに疑問を抱くようになる物語も素晴らしいが、同時に進行する、見下されていたものが、自分を認めさせるためではなく、ただ自分の素直な気持ちに沿って、自分を笑っていたものたちを助ける物語も胸を打つ。
その物語の背景に広がるのが、手描きで描かれた色鮮やかな大自然、植物、昆虫、動物たち。朝と夕、四季の移り変わりによって姿を変える情景は、大画面で体感したい。