邪悪なるもの (2023):映画短評
邪悪なるもの (2023)
ライター2人の平均評価: 3
定番テーマに新鮮なアプローチ。緊張感あふれるホラー
悪魔に取り憑かれるというテーマは定番ながら、かなり新鮮な形でアプローチ。映画のはじめから思いきりギョッとするビジュアルでショックを与えるも、それだけを売りにはしない。何も起きていない時に「いつ怖いことが起きるのか」と緊張させるのがうまく、終始気分が張り詰めっぱなしだった。最初に対応を失敗してどんどん悪いほうに向かっていくというストーリーも良い。説明しすぎず、意図的に曖昧にして謎を残すのも、登場人物の気持ちに入っていく上で効果的と言える。子役も含め、役者たちの演技もすばらしい。始まりのインパクトに比べると終わりはやや弱い感じはするものの、このジャンルが苦手でないなら見る価値はあり。
南米アルゼンチン産の土着ホラーは味が濃い
人里離れた村を舞台に、その土地ならではの風習や信仰をモチーフにした土着ホラーは多々あるが、本作はその舞台が南米アルゼンチンの片田舎で、土の匂いがする雰囲気が妙味。羊たちを飼育し、言い伝えを信じる人々の暮らす土地で、"悪魔憑き"と思われる事態が起きて、それが伝染していくという、土着ホラーと感染ホラーの合わせ技。そこに主人公の、離婚した妻から子供たちを取り戻したいという、秘めていた強い欲望が絡んで、現代的な心理サスペンスにもなっている。
監督はアルゼンチン出身、『テリファイド』のデミアン・ルグナ。今回も子供の用い方が容赦なく、主人公の幼い息子や、子供たちが登場するシーンが強烈な印象を残す。