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聖なるイチジクの種 (2024):映画短評

聖なるイチジクの種 (2024)

2025年2月14日公開 167分

聖なるイチジクの種
(C) Films Boutique

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 5

なかざわひでゆき

反体制映画としても女性映画としてもサスペンス映画としても秀逸

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 若者たちの反体制デモに対して政府の弾圧が激しさを増すイランの首都テヘラン。裁判所に勤める父親は体制側の大義を信じて疑わず、自由と正義を求める娘たちは抵抗する同世代に共鳴し、家庭を守りたい母親は親子の絆を繋ぎとめようとするも、ある事件がもとで家族間に疑心暗鬼が生まれ、恵まれたエリート一家の平和な日常は脆くも崩れ去る。権力側に属する家族の複雑な親子関係に、変わりゆく現代イラン社会のリアルな実像を投影しつつ、民衆を恐怖で支配しようとする権力を痛烈に批判し、声をあげて抵抗する女性や若者に未来への希望を見出す。圧倒的な力作。これを命の危険も顧みず撮った監督・スタッフ・キャストに敬意を表したい。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

「女性、命、自由」運動のパワフルでシネマティックな派生物

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

2022年9月の「マフサ・アミニの死」事件がモチーフとなる。『TATAMI』も同件の影響と反映があるが、本作はジーナ運動の直截的な支援が目的だ。主人公一家の娘である姉妹、大学生レズワンと高校生サナは過熱する抗議運動に共鳴する。だが父親は役人。予審判事に昇進した彼は、テヘランの良い家や立派な地位と引き換えに人々を死刑台に送り込む。かくして家族内が苛烈な政治的分断の場となる。

キーパーソンは母親ナジメ。彼女の意思決定次第では『関心領域』に近づいたはず。監督は筋金入りの反骨派モハマド・ラスロフ。167分の長尺はユニークな展開力を湛え、後半部はアクションスリラーの映画的ダイナミズムを豪快に獲得した!

この短評にはネタバレを含んでいます
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