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オスカー有力候補のドキュメンタリー作品、5人の少年達がえん罪になったレイプ事件とは?

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共同監督のデヴィッド・マクマホン(左)、サラ・バーンズ(右)
共同監督のデヴィッド・マクマホン(左)、サラ・バーンズ(右)

 今年のカンヌ国際映画祭に特別招待作品として出品された話題のドキュメンタリー作品『ザ・セントラル・パーク・ファイヴ(原題)/ The Central Park Five』について、共同監督のサラ・バーンズデヴィッド・マクマホンが語った。

 同作は、1989年4月19日の夜に、セントラルパークをジョギングしていた当時28歳の白人女性トリシャ・メイリが何者かに襲われ、ハーレム地区に住む黒人とヒスパニック系の5人の若者が、彼女を強姦した罪で逮捕され、後に起訴された。そして、十分な取り調べも行われずに裁判で有罪判決が下された彼らは、それぞれ約7年~13年にもわたって服役することになった。ところが、ある刑務所に服役していた連続強姦者が、この犯罪の真犯人であると自供したことから、有罪判決が覆されるというえん罪問題に発展していく過程を描いたドキュメンタリー作品。ドキュメンタリー界の巨匠ケン・バーンズが、娘サラ・バーンズとデヴィッド・マクマホンと共同監督も務めた意欲作。

 サラ監督は映画化する前に、この事件を題材にした本「ザ・セントラル・パーク・ファイブ:ア・クロニクル・オブ・ア・シティ・ワイルディング/The Central Park Five: A Chronicle of a City Wilding 」を執筆していた。「この事件を映画化する前に、すでに彼ら5人に本で取材していたために、彼らはわたしの取材に慣れていたの。実は本を執筆したときも、彼ら全員すぐに参加に応じてくれたけれど、事件のことについてオープンに語ってくれるまでは、結構時間がかかったの。本を執筆する前の取材は、事件の人物設定を明らかにし、それから感情的な質問をぶつけることになったけれど、映画化の際はすぐに何でも聞ける状態にあったわ」とサラ監督は明かした。

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 セントラルパークで起きたこのレイプ事件のあった4月19日は、このレイプ事件以外に、20~30人近くの少年たちが起こした傷害事件が何件もあった。「警察は事件のあった当日、できるだけ傷害事件を起こした少年を逮捕することに集中していたんだ。さらにその傷害事件は、レイプ事件が起こる前の出来事で、その判断は理にかなっていたんだ。だが、僕らが疑問視するのは、その後警察がレイプ事件現場でのすべての情報を入手し、彼ら5人の自供を聞き、さらにDNAを照合し一致しなかったにもかかわらず、彼ら5人が犯人ではないことを論理的に立証しようとしなかったことだ。ただ、これは警察だけでなく、メディアも与えられた情報だけを受け入れ、証拠を疑わなかったことも問題だと思うんだ。このレイプ事件に関して、あらゆる機関や媒体が、ミスを犯してしまったと思っている」とデヴィッド監督が語った。

 さらに問題だったのは、当時10代であった5人の少年達は、強制的に犯行告白させられたことだ。「検察もこの少年達の犯行告白をしっかり検証せず、しかも彼ら5人の少年達の弁護士も、これまでこのような大きな事件にかかわったことがなかったり、中には離婚弁護士だった人物もいたの。そのうえ、この5人の少年達の弁護士が、ぞれぞれ違った見解を持っていて、共同してこのレイプ事件に関して意見を交換していなかったことが、余計にこの事件を悪化させたの」とサラ監督が述べた。DNAや指紋が照合しなかったにもかかわらず、この強制告白だけで5人は有罪の判決が下される。

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 ところが、他の事件で終身刑となっていた囚人マティアス・レイエスが、2002年に実際にトリシャ・メイリのレイプ事件を起こしたことを認め、さらに後に行われたマティアスのDNA検査が事件と照合したため、5人の少年たちの有罪を棄却して、彼らは釈放されることとなった。ちなみに、この事件のあった1980年代後半は、安価な麻薬の流行と黒人青年が起こした犯罪事件が多発していて、白人女性がレイプ被害者であったことから、警察や検察が早急な解決を求めたことで、徐々に判断を誤らせていった。映画は、えん罪事件だけでなく、人種差別問題にも切り込んだ傑作で、オスカーのドキュメンタリー賞の有力候補に挙げられている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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