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大作主流に製作側もジレンマ!?フジテレビ名物プロデューサー、テレビ局の映画製作の今を語る

ウディネ映画祭に出席した臼井裕詞氏
ウディネ映画祭に出席した臼井裕詞氏

 イタリアで開催された第19回ウディネ・ファーイースト映画祭に『サバイバルファミリー』『帝一の國』『昼顔』の3作品で参加したフジテレビ映画事業部の臼井裕詞氏が、現地でトークイベントを行い、テレビ局における映画製作の現状について語った。

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 臼井氏は『踊る大捜査線』と『海猿』の両シリーズでプロデューサーを務めたヒットメーカーとして知られる。本映画祭にも『スペーストラベラーズ』(2000)、『海猿』(2004)、『ローレライ』(2005)で参加しており、今回が4度目12年ぶりの現地入りとなった。

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 昨年の同事業部は日本映画興行収入ベスト10内に『ONE PIECE FILM GOLD』(5位、51.8億円)、『信長協奏曲(のぶながコンツェルト)』(6位、46.1億円)、『暗殺教室~卒業編~』(8位、35.2億円)の3作を送り込むなど好調ぶりがうかがえる。ただ映画界の国内市場全体は2000年以降ほぼ横ばいとなっていることもあり、臼井氏は「映画を発展させて行くために積極的に海外プロモーションをしようと思っている」と海外映画祭を活用しているという。

 司会を務めた映画評論家のマーク・シリングからヒットの秘訣を問われた臼井氏は「テレビの視聴者が40~50代と年齢が高くなっている今、逆に映画で若者たちを取り込もうと考えています。なので10代や20代に向けた映画をつくっているのですが、その人たちが劇場に足を運びヒットに繋がっているのではないか」と持論を語った。するとシリングから「大ヒットを狙うあまり、今の日本映画は大手映画会社が作る大作か、そこまで行き着かず自主制作による低予算映画化のいずれかになってしまい、中規模の予算の良質な作品がつくりづらくなっている現状があるのではないか?」という指摘があった。

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 臼井氏も「日本では、例えば10作品のうち1つの作品が当たると観客がそこに集中して、残りの9作品はビジネスとして失敗する傾向がある。なので、その1つになりたいと思うあまり宣伝費用をかければかけるほど、当然ビジネスリスクも上がるので、ますます(製作側も)大きな作品で勝負しようとなる」と結果的に大作にならざるを得ない状況を説明した。続けて「マークさんがおっしゃる通り中間規模の作品がなくなることで、企画やキャスティングなどクリエイティブな選択がどんどん狭まって作品がつくりづらくなっており、CGやVFXを使用した大きな企画の方が通りやすくなっている。普通の家族の話やラブストーリーが少なくなっているのは、プロデューサーとしても心配しています」と製作者側としてもジレンマがあることを明かした。

 また公開後は自局での放送が前提となっているため、政権批判や社会風刺など挑戦的な作品は企画に上らないのでは? との問いに対し、「企画の段階でスポンサーに配慮したり、政治的なものを排除するようなことはなく、むしろ我々が考慮するのは観客が目を覆いたくなるような残酷なシーンの方。どうしても物語上に必要な場合は、企画の段階で監督たちと表現方法について話し合います」と語る。

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 さらには、欧州在住の日本人から「海外では日本ブームとなっており日本映画の需要はあると思うのだが、特集上映や映画祭などで上映されるのは黒澤明や小津安二郎などの旧作ばかりで、なかなか現代の作品に一般のお客さんが触れる機会がない。プロデューサーにどれだけの権限があるかわからないが、日本の配給会社がもっと積極的に海外展開に力を注ぐべきでは?」という声もあった。これに対して臼井氏は「世界の人に観てもらいたいという気持ちは我々も同じ。できればビジネスとして高く(作品を)買っていただきたいという思いもある。僕たちのようなテレビ局はこうした映画祭に積極的に参加して(現地の)配給会社と接点を持って、ちょっとでも良い形にできないか可能性を探っている」と善処していることを説明した。

 同様に臼井氏は本映画祭の魅力について「招かれた監督や俳優たちが食事などで隣同士になる接点を作ってくれ、東京でもなかなか会えない新しい監督や他作品のプロデューサーと話が出来ること」と語っていた。今回は『裏切りの街』の三浦大輔、『彼らが本気で編むときは、』の荻上直子、『オーバー・フェンス』などの山下敦弘など錚々たる監督たちが現地入りしていた。彼らとの新たな出会いが、企業のみならず映画業界全体を活性化させるような展開を迎えることを期待したい。(取材・文:中山治美)

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