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『ルパンVS複製人間』監督、当時は「当たるわけないと…」 MX4Dは心奪う出来

『ルパンVS複製人間』制作当時を振り返る吉川惣司監督
『ルパンVS複製人間』制作当時を振り返る吉川惣司監督

 国民的アニメ「ルパン三世」シリーズの劇場版第1作目として、多くのファンから支持を受けている映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン)』のMX4D上映が決定した。劇場公開から39年という歳月を経て、新たな命を吹き込まれた本作について、生みの親であり、MX4D版の監修も務めた吉川惣司監督が、当時の撮影秘話などを語った。

【写真】『ルパンVS複製人間(クローン)』がMX4D上映!

 MX4Dは、スクリーンに映し出されている映像を体感できる上映として、上下左右へのシート稼動や、香りやミストの噴出、首元、背中、足元への感触、さらに突風や霧、地響きなどの効果を堪能できる上映形式。自身の監督作がMX4D版となったことに吉川監督は「本当に助けられたという感覚」と述べる。

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 「助けられた」という表現の真意を問うと「当時、これで作品が完成したとは思えなかった」と胸の内を明かす。名作として語り継がれているだけに、意外な回答に感じられたが「絵が完成しない段階でアフレコやダビングはアニメではざらにあること。その後、声優さんや音響さんを優先し、ついでにまずい作画部分を直して入れ替える。リテークは必ずするもの」という前提があるという。ところが封切り直前だったので、このルパンは劇場版にもかかわらず“リテーク率ゼロ”という珍しい状況になった。「胸は張れない。全カット作るのが精いっぱいでした」。

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原作:モンキー・パンチ (C)TMS

 だから「助けられた」という発言になったという。「荒い部分・嫌なスキマが4D効果で埋め尽された。また、物語が感動狙いではなく、ドライなスラップスティックコメディーということをより鮮明にしてくれたと思います」。

 「最初は余計な効果と思っていたんです」と語った吉川監督。「テーマパークにあるような“見世物”は好きですが、映画とは別物と思っていたんです。でも、実際に体験すると、表現の幅は広がるし、今後はこうした効果を計算に入れて作品を作るところまで進んでいくんじゃないですかね」と映画の新しい表現への期待を口にした。

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 本作は、39年前の1978年に劇場公開されたが、当時を振り返り「最初から当たるわけないと思っていた企画」と苦笑い。続けて「当時、アニメの劇場版といえば前年に『宇宙戦艦ヤマト』があったぐらいで、(プロデューサーの)藤岡(豊)さんが、(宇宙戦艦ヤマトを手掛けた)西崎(義展)さんにライバル心を燃やして『ルパンやるぞ!』みたいな形で企画がスタートしたんです。当たらないと言われていたので、やりたいようにやろうということになって、テレビシリーズでお茶の間向けになっていたルパンを、グッと大人向けにシフトした」と秘話を語る。

 完成した作品は、宮崎駿の映画初監督作『ルパン三世 カリオストロの城』と人気を二分するほどの名作として、ファンの間では語り継がれているが、「監督なんてものは自作をまともに観られないです。カットごとに絵を描いた人の顔が浮かぶ。そのときどうダメを出したか、どれだけ嫌な思いをさせたか、なんてことをいちいち思い出してしまうんで」と回顧する。「もしかしたら今回、(MX4D版で)初めて心奪われて観ることができたかもしれません」とクリエイターならではの深い言葉を発する。

 最後に、当時話題になった映画のエンドソング、故・三波春夫さんが歌う「ルパン音頭」について聞くと「イメージソングを入れたいと主張したのは藤岡さん。宇宙戦艦ヤマトをジュリー(沢田研二)が歌ったから『こっちは誰にしようか』ってしつこいんです。本編が成り立つかどうかの瀬戸際なんで『好きにして』と無視した。内心は歌なんぞ入れるものかと決めていたんです。でも、製作の終盤に三波さんが歌ったカセットテープを聞いて……もう素晴らしかったですね。トリッキーな作りとして最後まで意表を衝きたいが方法がなくて困っていたんで。誰もあの歌がくるとは夢にも思わないでしょう。正直『やったぜ!』です」と懐かしそうに振り返った。(取材・文・写真:磯部正和)

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン)』【MX4D(R)版】は9月1日より全国上映

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