8年以上に渡って追い続けた215分の問題作、山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映

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「泉南・アスベスト国賠訴訟」を8年以上に渡って追い続けた原一男監督

 映画『ゆきゆきて、神軍』などで知られる原一男監督の新作長編ドキュメンタリー映画『ニッポン国VS泉南石綿村』がこのほど、開催中の山形国際ドキュメンタリー映画祭2017のインターナショナル・コンペティション部門で上映された。

【画像】『ニッポン国VS泉南石綿村』上映後のギャラリートーク

 原監督は上映前の映写チェック時、ホール内で転倒して鼻の下を強打するハプニングがあり、痛みを堪えつつ「世の中にたくさんわたしのことを恨んでいる人がいるんだと思い胸が痛いです」と自虐的発言で会場の笑いを誘った。

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 同作は大阪・泉南地域の石綿(アスベスト)工場の元労働者とその親族が、損害賠償を求めて国家賠償請求訴訟を起こした「泉南・アスベスト国賠訴訟」を8年以上に渡って追い続けた215分の力作だ。会場には原告団代表や弁護団も駆けつけ、上映後にギャラリートークも行い、映画の余韻冷めやらぬ100人近い観客が取り囲み大いに盛り上がった。

 同様の国を相手とした集団訴訟に関しては、今月10日、東京電力福島第一原発事故の被災者約3,800人が国と東京電力に慰謝料などを求めた生業(なりわい)訴訟判決で福島地裁が賠償命令判決を下したばかり。会場からも「泉南・アスベスト国賠訴訟の延長には福島の問題も出てくると思うが、国が相手となった場合、どういう戦い方をすればいいのか?」と言う質問が飛んだ。

 村松昭夫弁護士はまず「弁護団はまだ戦っています。アスベスト問題での一番の被害者は建設現場。ここを焚き付けない限り、日本のアスベスト被害者は救われない。10月27日に東京高裁で初めて建設アスベスト訴訟の判決が出ますが、困難な状況は続きます。でも行政に判断させるのではなく、司法で対等に議論する。そこに裁判の持っている、この社会を動かしていく原動力があると思います。いつまで続くか分かりませんが、最後までやり続けたい」と力説すると、会場から大きな拍手が沸き起こった。

 原告の一人である岡田陽子さんも「泉南アスベスト問題も終わったと思っていません。今回も一握りが救済されただけで環境曝露・家族曝露の問題は解決していません。国と戦うのは、相手はのらりくらりとしか返答しないので力も根気もいります。頑張ってください」と、全国で同様に苦しみを抱えている人たちに向けてエールを送った。

 続けて会場から、「原監督が密着することになり不信感は抱きませんでしたか?」と素朴な疑問が原告団に向けられ、またも会場は大爆笑となった。原告の一人である佐藤美代子さんは「原監督はわたしたちのために自分を投げ打って、一生懸命支えてくれました。わたしたちの苦しみを真剣に聞いてくださって、不信感なんてありませんでした」と監督と製作の小林左智子さんに感謝の言葉を述べた。

 その一方で劇中、『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三氏を彷彿とさせる過激な言動をしていた支援者の柚岡一禎さんは「(不信感は)そりゃ持ちましたよ。『ゆきゆきて、神軍』の原一男ですよ、皆さん。間違われたらアカンですよ」と忌憚(きたん)のない意見を述べて、会場を沸かせた。この展開に村松弁護士も「弁護団はもっと大変で、原監督に柚岡さんでしょ。どうなるかわからない」と本音を漏らした。しかし続けて「でもこうして(原監督の取材を許可するなど)情報をオープンにした方が、知恵と力が集まると皆さんに言いたい」と会場に語りかけた。

 『ニッポン国VS泉南石綿村』は第22回釜山国際映画祭(10月12日~21日)のワイド・アングル部門(ドキュメンタリー・コンペティション)に選出されたほか、原監督がコンペティション部門の審査委員長を務める第18回東京フィルメックス(11月18日~26日)でも特別招待作品として上映される。(取材・文:中山治美)

映画『ニッポン国VS泉南石綿村』は2018年3月、ユーロスペースにて公開
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017は10月12日まで開催

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